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接客型の飲食店のキャンセル料をどう決めるか|いつから、いくら、どう伝えるか
2026年9月20日・Rizaflow編集部

接客型の飲食店でキャンセル料を決めようとすると、多くの店主が同じところで手が止まります。取りたい気持ちはあるのに、いくらなら取ってよいのか、常連に嫌われないか、電話で受けた予約にも請求できるのかが分からないからです。この記事では、コースの予約と席だけの予約を分けて考え、仕入れの締切、人数の変更、宴会、遅刻までを含めて、店の規定として書ける形に落とし込みます。読み終えたときに、自店の規定のどこを直せばよいかが決まる構成にしています。
無断キャンセルと直前キャンセルは、どれくらい起きているのか
まず、飲食店のキャンセルが業界全体でどの程度の規模なのかを押さえておきます。経済産業省の検討会が2018年11月に公表した「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」は、予約台帳サービスのデータから、予約に占めるキャンセルの内訳を推計しています。
・連絡のない無断キャンセルが0.9% ・当日のキャンセルが3.9% ・前日のキャンセルが1.1% ・2日前のキャンセルが0.6% ・3日前以前のキャンセルが2.8%
同じレポートは、無断キャンセルが業界に与える損害を年間で約2,000億円、1日前と2日前のキャンセルまで含めると発生率は6%強、被害額は約1.6兆円と推計しています。数字は2018年時点のものですが、店主が肌で感じている「無断キャンセルより、当日の取り消しのほうが多い」という感覚と合っています。
ここから読み取れることが2つあります。1つは、規定を無断キャンセルだけに向けて作ると、件数の大半を占める当日と前日の取り消しが手つかずで残ることです。もう1つは、3日前以前の取り消しは次の予約で埋め戻せる余地があるので、同じ「キャンセル」でも損の大きさがまるで違うことです。
カウンター10席の店で考えると、月に200人の予約を受けていれば、当日の取り消しは平均して月8人前後になる計算です。1人の客単価が1万円なら、それだけで月8万円分の席が当日に空きます。規定を作る目的は、この8人から全額を取ることではなく、どの時点の取り消しにどれだけの損が出ているかを店自身が把握し、説明できる形にすることです。
飲食店のキャンセルは「コースの予約」と「席だけの予約」で損の中身が違う
キャンセル料を一律の率で決めてしまう店が多いのですが、飲食店の場合は予約の種類で損の中身が変わります。先のレポートも、考え方を大きく2通りに分けています。
1つ目はコースの予約です。日時、人数、コースの内容と金額が決まっているので、店はその内容に合わせて食材を仕入れ、仕込みを進めています。当日来なければ、その人の分の食材と仕込みの手間がそのまま宙に浮きます。
2つ目は席だけの予約です。日時と人数だけが決まっていて、何を注文するかは来店してから決まります。店は特定の料理を用意しているわけではありませんが、その人数が来る前提で、平均的な量の食材と人手を準備し、席を空けて待っています。
損の中身を並べると次のようになります。
| 項目 | コースの予約 | 席だけの予約 |
|---|---|---|
| 食材 | その人数分を献立どおりに仕入れ済み | 平均的な量を見込みで準備 |
| 仕込み | 献立どおりに済んでいる | 通常の仕込みの一部 |
| 席 | 空けて待っている | 空けて待っている |
| 転用できるもの | 乾物、酒、翌日に回せる食材 | 飲み物、日持ちする食材の大半 |
| 金額の根拠 | コース料金 | 平均客単価 |
レポートは、無断キャンセルの場合、店は遅れて来るかもしれない客のために予約時刻から平均2〜3時間程度(もしくは閉店まで)席を空けて待っていることが多い点も考慮すべきだとしています。接客型の店で2時間席を空ければ、その夜の1回転分が消えます。
この違いを規定に反映させないと、席だけの予約に対してコース料金並みの額を請求するような、根拠を説明できない規定になります。反対に、コースの予約に対して控えめすぎる額にすると、仕入れた食材の損を店がすべてかぶることになります。自店の予約がどちらの形で入っているかを、まず台帳で確かめてください。
金額の上限を決めるのは、平均的な損害という物差し
店が自由に金額を決められるかというと、そうではありません。消費者との契約で違約金を定める場合、消費者契約法第9条が、同じ種類の契約の解除によって事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効としています。
この条文のポイントは2つです。1つは、物差しが「平均的な損害」であることです。ある夜に実際にいくら損をしたかではなく、同じ種類の予約が取り消されたときに平均してどれだけ損が出るかで考えます。もう1つは、条文が「解除の事由、時期等の区分に応じ」と書いていることです。つまり、何日前に取り消されたかで段を分けることが前提になっています。
先のレポートは参考事例として、パーティーの予約を2か月前に解約した個人に店が損害賠償を求めた裁判を紹介しています。東京地方裁判所は、1人あたりの料金4,500円の3割に、予定人数の平均である35名を掛けた4万7,250円を平均的な損害と認めました。2か月前という、次の予約で埋め戻せる時期の取り消しでも、損害がゼロとは扱われなかった例です。
この事例から分かるのは、時期が早ければ請求できないのではなく、時期に応じて額が下がるということです。そして、額の根拠を店が示せることが前提になります。「当店は当日キャンセル100%です」と書くだけでは足りず、なぜその額になるのかを聞かれたら答えられる準備が必要です。
なお、個別の規定が法的に有効かどうかの最終的な判断は、事情によって変わります。規定を固める段階で不安が残るなら、商工会議所の相談窓口や弁護士に確認してください。この記事では、相談に持っていける形に規定を整えるところまでを扱います。
席だけの予約は、平均客単価の何割かで考える
席だけの予約は、何を注文する予定だったかが分からないので、損害を1件ずつ積み上げることができません。先のレポートは、この場合の目安を次のように示しています。
この際、席のみ予約の場合には、個別の契約について実際に発生しうる損害の合計を算定することはきわめて難しいので、客観的基準により算定した平均客単価の何割か(平均客単価から転用可能な原材料費・人件費等を除いた額)が損害賠償額の一つの目安と考えられる。 出典: aichi-inshoku.or.jp
同じレポートは、一般的に飲食店の売上は食材の原価が3割、人件費が4割弱、家賃や光熱費などの固定費が3割、利益が数パーセントと言われているとしたうえで、直前に起きる無断キャンセルでは補填できない比率が5〜7割とさらに高まると述べています。
これを自店に当てはめると、計算は次のようになります。
・前月のディナーの売上を来店人数で割り、平均客単価を出す。ここでは8,000円とする ・そのうち、翌日に回せる飲み物や日持ちする食材の分を差し引く ・残りが、席だけの予約が無断で取り消されたときの損の目安になる
補填できない比率を5割とみれば1人4,000円、7割とみれば5,600円です。どちらに寄せるかは、自店の飲み物の比率で変わります。酒の売上が大きい店は、酒は翌日に回せるので比率は下がります。
もう1つ大事なのが、レポートが「客観的基準」の条件として、消費者が常に平均客単価を確認できることを挙げている点です。規定に「平均客単価の5割」と書くなら、その平均客単価がいくらなのかを予約ページに書いておく必要があります。「ディナーの平均客単価 8,000円(前月の実績、飲み物込み)」のように、いつの数字で何を含むかまで添えてください。実態からかけ離れた単価を書くことは許されないとも明記されているので、半年に1度は数字を見直します。
コースの予約は、仕入れの締切日で段を切る
コースの予約は、食材を仕入れた時点で損が確定し始めます。だから段の切れ目は「何日前」という数字から決めるのではなく、仕入れの締切から逆算します。
接客型の店の仕入れには、だいたい3つの締切があります。
・特別な食材の発注締切。ジビエ、蟹、特定の産地の牛肉、予約分だけ取り寄せる魚など。3〜5日前に発注することが多い ・通常の食材の発注締切。前日の昼や夕方に翌日分を業者に伝える ・当日朝の仕入れ。市場で鮮魚や野菜を買う。ここで買った分は当日使い切る前提
段はこの3つに合わせます。特別な食材を使うコースなら、その発注日を過ぎた取り消しから食材分を請求の対象にします。通常のコースなら、前日の発注締切を過ぎたところで1段上がり、当日朝の仕入れを終えた時点でもう1段上がります。
注意したいのは、レポートも、コースの予約で全額を請求できる場合があるとしつつ、転用できる飲食物の代金や人件費は差し引く必要があると書いている点です。前日に取り消されたコースでも、翌日の別の予約に回せる食材があるなら、その分は損に入りません。
たとえば1人1万2,000円のおまかせコースで、原価のうち鮮魚が半分、残りが乾物や調味料や日持ちする仕込みだとします。前日の夕方に取り消されたなら、鮮魚はまだ買っていないので損は小さく、当日の昼に取り消されたなら、鮮魚は買ってあり、乾物の仕込みも済んでいます。同じ「直前」でも、発注と仕入れのどちら側にいるかで額の根拠が変わります。
仕入れの締切は店ごとに違います。取引している業者の締め時刻と、市場に行く曜日を紙に書き出し、それを規定の段と並べてみてください。段と締切がずれていれば、規定のほうを直します。
人数が減った連絡は、キャンセルとは別の段で扱う
接客型の飲食店で意外に揉めるのが、人数の変更です。4名で予約していた客から、当日の夕方に「1人来られなくなったので3名で」と連絡が来る。これは取り消しの一種ですが、予約そのものは生きているので、店主は請求をためらいがちです。
しかし店の損の中身は、1名分の取り消しと変わりません。コースなら1名分の食材は仕入れ済みで、4人掛けの卓に3人で座ってもらうことになり、席の効率も落ちます。カウンター席なら、1席分が空いたまま営業することになります。
規定には、人数の変更を明記しておきます。書き方の例は次のとおりです。
・コースの予約は、前日の18時までの人数変更は無料 ・前日の18時を過ぎてからの減員は、減った人数分についてキャンセル料の規定を当てる ・増員は席に余裕がある場合のみ受ける
ここで、「減員は1名まで無料」のような例外を作る店もあります。常連の多い店では現実的な判断ですが、例外を作るなら規定に書いてください。店主の気分で請求したりしなかったりすると、同じ客から「前回は取られなかった」と言われます。
もう1つ、人数変更の連絡をどう受けるかも決めておきます。電話で受けると、営業中に取れずに留守番電話に入り、気づいたのが閉店後という事態が起きます。人数を客自身が変更できる受付の形にしておくと、何時に誰が変えたのかが記録に残り、規定の段のどこに当たるかも後から確かめられます。
宴会と貸切は、通常の予約と同じ規定に入れない
歓送迎会や忘年会の宴会、店全体の貸切は、通常の予約とは損の大きさと仕入れの動きが違います。同じ規定に入れると、どちらかに合わなくなります。
宴会の場合、幹事が人数を固めきれないまま予約を入れ、直前まで人数が動くのが普通です。20名で予約して、当日に15名になるといったことが起こります。通常の減員の規定をそのまま当てれば、5名分の請求が幹事1人に向かい、関係がこじれます。
宴会と貸切では、次の3点を別に決めておきます。
・最終人数を確定する日。3日前の18時、のように時刻まで書く。確定した人数で請求することを明記する ・予約金を預かるかどうか。貸切で他の客を断っている場合は、予約金の検討に値する ・飲み放題など、人数で料金が決まるプランの扱い。確定人数を下回った場合に、確定人数分を請求するのか、来た人数分にするのか
先のレポートも、予約の人数や金額から無断キャンセルの被害が一定規模以上になると予想される場合には、事前決済や預かり金の導入も考えられるとしています。宴会と貸切は、まさにこの条件に当てはまる予約です。
貸切で店を閉めた夜に取り消されると、その夜の売上がほぼなくなります。通常の予約では預かり金を取らない店でも、貸切だけは予約金をいただく、という線の引き方は客にも説明しやすく、揉めにくい形です。
遅刻を何分でキャンセル扱いにするかも、規定のうち
見落とされやすいのが遅刻です。予約の時刻を30分過ぎても来ない、電話にも出ない。この客を待ち続けるのか、次の客を案内するのか。これを決めていないと、席を空けたまま1時間が過ぎていきます。
先のレポートは、海外の予約サービスの例として、多くの飲食店では遅刻を15分間のみ許容し、事前の連絡なしで到着が遅れた場合はその予約を無断キャンセルとして扱う取り組みを紹介しています。日本の接客型の店でそのまま使える数字かは業態によりますが、「何分で扱いが変わるか」を先に書いておく発想は参考になります。
接客型の店では、次の2段で考えると決めやすくなります。
・連絡のない遅刻が15分を過ぎたら、店から電話を1回かける ・連絡がつかないまま30分を過ぎたら、席を別の客に案内してよいものとし、その予約は無断キャンセルとして扱う
コースの店では、遅刻によって提供の順番が崩れることも書いておきます。8人のカウンターで一斉にスタートするおまかせの店では、1人が30分遅れると、その人の分だけ別に進めることになり、他の客の料理の間合いにも影響します。「遅れて来店された場合は、途中の品からのご提供になります」と書いておけば、当日の説明が短く済みます。
遅刻の扱いは、キャンセル料の規定と同じ場所に書きます。予約の確認の連絡にも、前日の念押しの連絡にも入れておくと、当日に「聞いていない」と言われる余地がなくなります。
規定の文面を、そのまま使える形にしてみる
ここまでの考え方を、1枚の規定にまとめると次のようになります。金額や時刻は例なので、自店の仕入れと客単価に合わせて置き換えてください。
| 予約の種類 | 取り消しの時期 | キャンセル料 |
|---|---|---|
| 席だけの予約 | 当日の開店時刻まで | いただきません |
| 席だけの予約 | 連絡なし、または予約時刻を過ぎてから | お一人あたり平均客単価の5割 |
| コースの予約 | 前日の18時まで | いただきません |
| コースの予約 | 前日の18時以降 | コース料金の5割 |
| コースの予約 | 当日、または連絡なし | コース料金の全額 |
| 特別食材のコース | ご予約日の4日前以降 | 食材費としてコース料金の3割から |
| 宴会・貸切 | 最終人数の確定日以降 | 確定人数分のコース料金 |
表の下には、次の4つを添えます。
・平均客単価は前月の実績で、いまは1人8,000円(飲み物込み)であること ・人数が減った場合は、減った人数分に同じ規定を当てること ・連絡のないまま予約時刻を30分過ぎた場合は、取り消しとして扱うこと ・体調不良など、やむを得ない事情があるときは連絡をもらえれば相談に応じること
最後の1行は、請求しない余地を残すためではなく、連絡をもらうために書きます。先のレポートも、30分前の取り消しでも連絡があれば店は損害の一部を請求するのみ、あるいは関係を考えて請求しないことが多いのに対し、連絡のない無断キャンセルでは損を軽くする手立てがないと整理しています。規定は、客に連絡をさせるための道具でもあります。
どこに書き、電話で受けた予約にはどう伝えるか
規定を作っても、客が予約する前に目にしていなければ、請求の根拠として弱くなります。先のレポートは、キャンセル料を請求するためには、適切な額を算定し、ポリシーを設定し、予約時にその内容を店が客に明示することが必要だとしています。
書く場所は、次の4か所です。
・予約を受けるページ。予約の確定ボタンの直前に、規定の要約と全文へのリンクを置く ・予約が確定したときに送る確認の連絡。規定の要約をそのまま入れる ・前日の念押しの連絡。取り消しの期限と、取り消しの方法を書く ・グルメサイトなど、外部で予約を受けている場合はその店舗ページ。規定の中身を揃える
問題は電話で受けた予約です。レポートは、電話の予約でも必要最低限のキャンセルポリシーの説明をすべきだとしています。ただ、営業中に電話を取って、規定を読み上げる余裕のある店はほとんどありません。
現実的なのは、電話では1文だけ伝え、残りは文字で送る形です。「前日の18時を過ぎてからの取り消しは料金がかかります。詳しい内容は確認のメールでお送りします」と言い、予約を台帳に入れたら、客の連絡先に確認の連絡を送ります。そのためにも、電話の予約で必ず聞くのは、名前と人数と日時に加えて、文字を受け取れる連絡先です。
外部サイトと自店のページで規定の中身が食い違っていると、客は安いほうを主張します。どこか1か所を直したら、他の場所も同じ日に直すことを習慣にしてください。
実際に請求するときに詰まるところ
規定を作った店が次に困るのは、実際に請求する場面です。当日来なかった客に、どうやって払ってもらうのか。ここで手が止まり、結局請求しないまま終わる店は少なくありません。
詰まる場所は、だいたい次の3つです。
・連絡先が分からない。電話番号を聞いていても、非通知でかけてきた客や、名字だけ聞いた客には連絡がつかない ・払い方を用意していない。振込先を伝えるのか、次回来店時にもらうのか、決まっていない ・払ってもらえなかったときの次の手がない。数千円のために時間をかけられない
1つ目は、予約の時点で解決するしかありません。電話の予約でも、フルネームと、つながる電話番号か受け取れるメールアドレスを必ず聞きます。予約ページで受ける場合は、この2つを入力しないと確定できないようにしておきます。
2つ目は、請求の文面と振込先をあらかじめ作っておきます。無断キャンセルの翌日に、予約の日時と人数、規定の該当箇所、金額、振込の期限を書いた連絡を送ります。感情的な言葉は入れず、規定に沿って淡々と書きます。
3つ目については、全員から回収することを目標にしないでください。請求の連絡を送り、期限までに払われなければ、以後の予約を受けないという対応にとどめる店も多くあります。少額の請求を裁判で争うのは、時間と費用の面で現実的でないことがほとんどです。請求の連絡を送った事実と、その後の予約を断る判断の根拠を台帳に残しておくことのほうが、店を守る役に立ちます。
客から額が法外だと言われた場合は、消費生活センターに相談するよう案内されることがあります。そのときに規定の根拠を説明できるよう、平均客単価の算定の元になった数字は保管しておいてください。
カードを預かるか、預からないかの判断
請求の手間を根本からなくす方法として、予約の時点でクレジットカードを登録してもらう、あるいは事前に決済してもらう形があります。先のレポートも、ネット経由の予約時にカード番号を登録してもらえば、デポジットやキャンセル料の徴収が可能になり、無断キャンセルの抑止が期待できるとしています。
ただし、接客型の店がすべての予約にカードの登録を求めるべきかというと、そうとは限りません。判断の材料は次のとおりです。
・客単価。1人1万5,000円を超えるおまかせのコースなら、1件の無断キャンセルの損が大きく、登録を求めても客は納得しやすい ・席数。カウンター8席の店で1組2名が来なければ、その夜の売上の4分の1が消える ・客層。常連の割合が高い店では、登録を求めることで予約の手間が増え、かえって常連が離れることがある ・予約の経路。電話の予約が多い店では、カードの登録をどこでしてもらうかという問題が残る
線の引き方としては、全部か無しかではなく、予約の種類で分けるのが現実的です。宴会と貸切、特別食材のコース、年末の繁忙期の予約だけ事前決済にし、通常の席だけの予約は規定と連絡先で運用する、という形です。
事前決済を入れる場合は、決済の手数料がどれだけかかるか、返金の手続きを誰がするかも確認します。手数料の率は、使う道具ごとに違います。予約の受付と決済を同じ道具で扱うのか、決済だけ別の道具にするのかによって、返金のときの手間が変わります。
取り消しの連絡を受けやすくすると、請求そのものが減る
キャンセル料の規定を考えるとき、請求の場面ばかりに目が行きますが、店にとって一番よいのは、請求する前に連絡をもらって、空いた席を埋めることです。
先のレポートは、客の中には取り消そうと思っても連絡がつきにくく、結果として無断キャンセルになっている場合もあると想定し、取り消しの連絡を受ける仕組みを整えることが不可欠だとしています。開店前で電話がつながらない、営業中で誰も出ない、という状態は、接客型の店では毎日のように起きています。
取り消しの連絡を受けやすくする手は、次のとおりです。
・前日の念押しの連絡に、取り消しと人数変更ができるリンクを付ける ・電話以外の取り消しの方法を、予約の確認の連絡に書いておく ・取り消しが入ったら、店主のスマートフォンに通知が届くようにする
3つ目が抜けていると、客が期限内に取り消していても、店が気づくのは翌日という事態になります。当日の昼に1席空いたと分かれば、常連に声をかけたり、店の前を通る客を案内したりして埋められます。
前日の念押しの連絡を送るようにした店からは、当日の朝に取り消しの連絡が入るようになったという話をよく聞きます。取り消しそのものが減るわけではありませんが、無断で来ない客が、連絡をしてくる客に変わります。その分、キャンセル料を請求する場面が減り、規定は「めったに使わないが、いざというときに根拠になるもの」になっていきます。
受付の道具で、規定と連絡をどこまで一続きにできるか
ここまでの手順を紙と電話だけで回そうとすると、規定の掲示、確認の連絡、前日の念押し、取り消しの受付、請求の記録が、それぞれ別の場所に散らばります。キャンセル料の規定を運用に乗せるには、予約を受けた瞬間から来店後までを、なるべく1か所で扱える形にしておくことが近道です。
予約の受付ツールを比べるときは、次の点を確かめてください。
・予約の確定前に、キャンセル料の規定を見せられるか ・確認の連絡と前日の念押しの連絡を、自動で送れるか。その文面を店が書き換えられるか ・客が自分で取り消しや変更をできるリンクを付けられるか ・取り消しの記録が、日時とともに残るか ・事前決済を、必要な予約だけに使えるか
たとえば、予約完了の連絡、前日の念押し、来店後の御礼の連絡を自動で送り、客自身が取り消しと変更をできるリンクを付けられる道具があります。何ができるかはできることにまとめられていて、自動の連絡は文面を店が編集でき、送信状況と開封も管理画面で確かめられます。こうした道具は、決済が必須でない業態に合わせて、予約の受付から次の来店までを一続きにしているので、現金や店頭の支払いで完結している店でも、規定を伝えて連絡をもらう部分だけを先に整えられます。
事前決済については、プランによって使える範囲が変わります。月額と予約件数の上限、どのプランで事前決済が使えるかは料金で確かめられます。すでに別の予約サービスを使っていて比べたい場合は、公開情報をもとに料金と機能を並べた他社との比較が参考になります。
注意しておきたいのは、飲食店向けの予約台帳には、卓の割り当てやグルメサイトとの在庫の連携を中心に作られたものがあり、時間枠とメニューで予約を受ける道具とは作りが違うことです。どちらが合うかは、席数と予約の経路で決まります。自店の受け方に近い使い方は業種ごとの使い方で探し、客が見る予約ページと店側の管理画面はデモを見るから実際に触って確かめられます。取り消しの扱いや乗り換えの手順で迷う点は、よくある質問に回答がまとまっています。
Q1. 飲食店のキャンセル料は、コース料金の何%にするのが妥当ですか?
一律の率はありません。コースの予約は、仕入れの締切を過ぎたかどうかで段を分け、当日や連絡のない取り消しは全額、前日の発注締切以降は5割といった形が考えやすい組み方です。ただし翌日に回せる食材や飲み物の分は損に含めません。自店の仕入れの時刻と原価の中身を並べ、その根拠を説明できる額に決めてください。
Q2. 席だけの予約でもキャンセル料を請求できますか?
請求は考えられます。経済産業省の検討会のレポートは、席だけの予約では平均客単価の何割か、つまり平均客単価から転用できる原材料費や人件費を除いた額が目安の1つになるとしています。その場合、平均客単価がいくらかを客が常に確かめられるよう、予約ページに算定の時期と中身を添えて書いておく必要があります。
Q3. 電話で受けた予約にもキャンセル料を請求できますか?
電話の予約でも、内容が決まっていれば契約が成立することがあるとされています。ただし請求するには、予約の時点で規定を伝えていることが前提になります。電話では「前日18時以降の取り消しは料金がかかります」と1文だけ伝え、予約を入れたら確認の連絡で規定を文字で送る形にしておくと、伝えた記録が残ります。
Q4. 常連の客にもキャンセル料を請求すべきですか?
規定は常連にも同じように当てるのが基本です。例外を作るなら、減員1名までは無料、体調不良で当日の開店前に連絡があれば相談、のように規定に書いておきます。店主の判断で請求したりしなかったりすると、別の客との間で不公平が生まれ、説明がつかなくなります。規定を書いておくことが、常連との関係を守ることにもつながります。