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動物病院がLINEで予約を受ける|個別のやり取りを残さない形にする
2026年9月16日・Rizaflow編集部

飼い主に電話をかけさせたくない、という理由でLINEの公式アカウントを予約の窓口にした動物病院は多くあります。実際に始めてみると、予約の依頼だけが来ることはまずありません。患部の写真が届き、薬が残り少ないという連絡が入り、診療時間外に「吐いています」というメッセージが届きます。この記事は、その混ざり方をどう解くかという話です。結論から言えば、LINEは入口として残したまま、日時と診療内容と個体を確定させる工程だけを別の画面に渡すのが、動物病院にとっていちばん壊れにくい形です。
動物病院のLINE予約が、他の業種と決定的に違うところ
美容室やネイルサロンがLINEで予約を受けるとき、届くメッセージはほぼ「いつ空いていますか」で揃います。動物病院ではそうなりません。同じトーク画面に、性質のまったく違う4種類の連絡が流れ込みます。
・予約の依頼。「金曜の午後、ワクチンをお願いします」 ・症状の相談。「昨日から下痢が続いています。フードを変えたほうがいいですか」 ・薬と処方食の在庫確認。「フィラリアの薬が今月分で切れます」 ・時間外の急変。「夜中に何度も吐いて、ぐったりしています」
このうち2つ目と4つ目が、店舗型のサービス業には存在しない類のものです。そして、この2つをトーク画面で受けてしまうことに、動物病院側のいちばん大きな負担があります。
症状の相談に文字で答えることは、獣医師にとって気軽にできる行為ではありません。獣医師法は、自ら診察していない状態での診断書の交付や、一定の医薬品の投与と処方を禁じています。
第十八条 獣医師は、自ら診察しないで診断書を交付し、若しくは劇毒薬、生物学的製剤その他農林水産省令で定める医薬品の投与若しくは処方若しくは再生医療等製品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第九項に規定する再生医療等製品をいい、農林水産省令で定めるものに限る。第二十九条第二号において同じ。)の使用若しくは処方をし、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証明書を交付し、又は自ら検案しないで検案書を交付してはならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
写真1枚から病名を答えることはできません。しかし飼い主の側は、写真を送った時点で答えが返ってくると思っています。ここで起きるのは、返信に時間がかかることそのものより、返信の書き方を毎回ゼロから考えなければならないという負担です。「診察させていただかないと判断できません」という一文を、角が立たないように、しかも来院を促す形で書く。これを1日に何件も繰り返すことになります。
予約の依頼だけを別の経路に逃がしておけば、トーク画面に残るのは相談と在庫確認だけになります。件数が減れば、1件あたりに使える時間が増えます。分けることの実利はそこにあります。
表示名では、どの飼い主かが分からない
LINEのトークに並ぶのは、飼い主の本名ではなく、その人が自分で設定した表示名です。動物を飼っている人の表示名には、はっきりした傾向があります。飼っている子の名前と絵文字だけ、という設定が非常に多い。「もなか」「Luna🐈」「こむぎ母さん」といった表示名が並んだ画面から、カルテ番号を引き当てることはできません。
ここから2つの手間が生まれます。
1つ目は、毎回の名乗りの要求です。予約の依頼が来るたびに「恐れ入りますが、飼い主様のお名前とお電話番号をお願いします」と返すことになります。飼い主にしてみれば、前回も答えたことをまた聞かれている状態です。3回目あたりから、この往復自体が来院のハードルになります。
2つ目は、多頭飼いの取り違えです。動物病院の顧客は、1人が複数の動物を連れてくることが珍しくありません。犬1頭と猫2頭を飼っている家から「ワクチンお願いします」とだけ届いたとき、どの子なのかが分かりません。猫の3種混合なのか、犬の混合ワクチンなのか、何頭連れてくるのかで、押さえるべき枠の長さが変わります。3頭まとめて連れてくるなら、診察室の滞在時間は単純に3倍近くになり、その後ろの予約が押します。
この2つは、聞き方を工夫すれば解決する問題ではありません。トーク画面という形式そのものが、構造化された情報を取るのに向いていないという話です。飼い主が自由に文章を書ける欄では、こちらが欲しい項目は揃いません。逆に言えば、飼い主に選んでもらう形の画面に渡した瞬間、この2つは同時に消えます。カルテ番号を持っている飼い主なら、その番号に紐づいた動物の一覧から選ばせればよく、初めての人なら種と品種と体重を選ばせればよい。決済を挟まない業態に合わせて、予約の受付から次の来院までを一続きにしているという設計であれば、この情報はそのまま次回の予約にも引き継がれます。何ができて何ができないかはできることに整理されているので、いま手作業で聞き取っている項目と突き合わせて見てください。
診療内容によって、押さえるべき枠の長さが3倍以上変わる
トリミングや美容室であれば、メニュー名が決まれば所要時間はおおよそ決まります。動物病院はそうなりません。同じ「診察」という言葉の中に、所要時間が何倍も違うものが同居しています。
おおまかな目安として、次のように分かれます。
・狂犬病予防注射や混合ワクチンの接種のみ。問診と体温測定と接種で10分から15分 ・爪切り、肛門腺絞り、耳掃除といった処置のみ。10分前後 ・経過を見るだけの再診。前回の所見が残っているので10分から15分 ・初診の一般診察。問診票の記入、カルテの新規作成、身体検査で30分前後 ・皮膚、耳、消化器などの継続する症状の初診。検査が入ると45分を超えることがある ・健康診断。採血、レントゲン、超音波まで入ると60分以上
つまり、枠の長さを決めるためには「何をしに来るのか」を予約の時点で取らなければなりません。トーク画面で「ワクチンです」と言われても、それが初回の子犬の1回目なのか、毎年の追加接種なのかで、説明に要する時間がまったく違います。子犬の初回であれば、接種の間隔、次回の予定、散歩を始めてよい時期、フィラリアとノミダニの予防の説明まで含まれます。
ここを取り切れないまま枠を押さえると、予約表の上では埋まっているのに実際には空いている、あるいはその逆という状態が日常的に起きます。午前の診療が慢性的に押す病院の多くは、この見積もりのずれが原因です。待合室に飼い主が溜まり、そこに当日の飛び込みが重なると、受付の1人がその対応に張り付くことになります。
予約の入口で診療内容を選ばせる形にしておけば、この見積もりは自動で入ります。ただし、飼い主に選ばせる選択肢の粒度は慎重に決める必要があります。専門用語を並べると飼い主は選べません。「予防接種」「爪切りなどの処置」「初めての受診」「前回の続き(再診)」「健康診断」くらいの、飼い主の言葉で書かれた5つか6つが実用的な線です。
既読が付いても、予約は確定していない
LINEで予約を受ける病院で必ず起きるのが、予約が確定したかどうかの認識のずれです。飼い主は、メッセージに既読が付いた時点で「伝わった」と考えます。病院の側は、返信して日時を確定させるまでは予約ではないと考えています。この差が、当日の待合室で表面化します。
ずれが起きる理由ははっきりしています。診療時間中、誰もLINEを見ていないからです。受付は会計と電話と問診票の案内で手が塞がっており、診察室の獣医師と看護師は当然スマホを見ていません。結果として、朝9時に届いたメッセージに返信するのが13時の休憩時間、というようなことが起きます。その4時間のあいだ、飼い主は返信を待ちながら、その枠が押さえられていると思っています。
さらに厄介なのは、複数のスタッフが同じアカウントを見る場合の二重対応です。休憩に入った受付スタッフAが返信し、その5分後に別のスタッフBが同じトークに気づいて返信する。あるいは、Aが「確認して折り返します」と書いたまま申し送りを忘れて、誰も折り返さない。トーク画面には担当を割り当てる仕組みがないので、誰が対応中かが画面から読み取れません。
この問題は、返信を速くすることでは解決しません。返信という人の作業が挟まっている限り、速度は人の手が空いているかどうかに依存します。解くべきなのは、飼い主が自分で空き枠を選んで、選んだ瞬間に確定する形にすることです。そうすれば、既読と確定のずれは最初から発生しません。予約の受け方をどう組み替えるかは、業種ごとに事情が違います。業種ごとの使い方に業態別の組み方がまとまっているので、動物病院の項と自院の診療体制を並べて確認してみてください。
時間外に届く急変の連絡を、どう受けるか
動物病院がLINEを予約窓口にしたときの、いちばん重い論点がこれです。夜中の2時に「けいれんしています」「ぐったりして動きません」というメッセージが届きます。翌朝それを開くまで、病院側は知りません。
この状況で飼い主が置かれている立場を考えると、放置してよい問題でないことが分かります。飼い主は、その病院のLINEを「病院とつながっている線」だと思っています。電話と違って呼び出し音も鳴らないので、送った側は届いたと信じたまま朝を待ってしまいます。夜間救急動物病院に行けば助かった状態で、朝まで待ってしまう例が現に起きます。
対策として実務で機能しているのは、次のような組み合わせです。
・自動応答を診療時間外に必ず立てる。「このアカウントは診療時間内のみ確認しています」と、まず線を引く ・その自動応答の中に、地域の夜間救急動物病院の名称と電話番号を直接書く。リンクだけにしない。慌てている人はリンクを押しません ・「すぐに連絡すべき症状」を自動応答に列挙する。呼吸が苦しそう、けいれん、意識がない、猫でおしっこが出ていない、大量に吐き続けている、異物を飲み込んだ、といったものです ・リッチメニューの最上段に、時間外の案内を常時置く。トークを開いた人が必ず目にする位置にする
猫の尿道閉塞のように、半日の遅れが命に直結する症例があります。そうした症状を具体名で列挙しておくことは、飼い主のためであると同時に、病院が後から責められないための備えでもあります。
ここでも構造は同じです。緊急の連絡は電話に寄せ、予約の確定は自動で完結する画面に寄せる。トーク画面に残すのは、その中間にある相談だけにする。3つを1つの窓口で受けようとすると、いちばん緊急度の高いものがいちばん見落とされやすくなります。
予防のリマインドは、LINEが最も効く場面
ここまでLINEで受けることの難しさを並べましたが、動物病院にとってLINEが圧倒的に強い用途もあります。予防のリマインドです。
犬を飼っている人には、法律で決まった年1回の予定があります。
(予防注射) 第五条 犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生労働省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
これに加えて、混合ワクチンの追加接種、フィラリア予防の開始と終了、ノミとマダニの予防、シニア期に入った子の定期的な血液検査があります。猫であれば、混合ワクチンと室内飼いでも必要な健康診断があります。つまり動物病院の顧客は、全員が年間のスケジュールを持っています。
しかし飼い主は、そのスケジュールを覚えていません。犬の登録と鑑札の扱いも同じで、狂犬病予防法は生後90日を経過した日から30日以内の登録申請を定めていますが、これを正確に把握している飼い主は多くありません。市区町村からの案内が届いて初めて動く人がほとんどです。
だからこそ、病院側から出す通知には価値があります。郵送のはがきは印刷と切手で1通あたりのコストがかかり、届くまでに数日の遅れがあります。LINEであれば即日届き、開封率も郵送より高くなります。
ただし、ここでも同じ罠があります。リマインドのメッセージに「ご希望の日時をお知らせください」と書くと、返信がトーク画面に殺到します。春の予防シーズンには、狂犬病とフィラリアの案内が重なって、1日に数十件の返信が同時に来ることになります。これを人が1件ずつさばくのは現実的ではありません。
リマインドに載せるべきなのは、日時を尋ねる文ではなく、空き枠がそのまま見える予約画面への導線です。飼い主は通知を見て、そのまま枠を押さえ、トーク画面には1件も残らない。この形にして初めて、リマインドを送る件数を増やせます。送れば送るほど受付の作業が増える構造のままでは、通知を出すこと自体が怖くなります。
問診をどこで取るかで、待合室の混み方が変わる
予約を取った飼い主が、来院してから待たされる。この待ち時間の一部は、診察そのものではなく、受付での作業に使われています。動物病院の受付では、初診なら問診票の記入、再診なら前回からの変化の聞き取り、予防で来た子なら前回の接種日の確認が発生します。問診票をその場で書いてもらうと、飼い主が記入し終えるまでに10分前後かかることがあります。特に、動物を抱えながら片手で書く状況では、記入は進みません。
この時間は、予約の枠には入っていません。10時の予約で来院した飼い主が、実際に診察室に入るのが10時15分になる。その分だけ後ろが押します。1日30件の来院がある病院で、うち初診が6件あれば、記入だけで1時間分の余白が消えている計算になります。
LINEのトーク画面で事前に問診を取ろうとすると、別の問題が出ます。質問を箇条書きで送って、飼い主が自由に返信する形になるため、答えが揃いません。「いつから」という問いに「少し前から」と返ってくる。「食欲は」という問いに「普通です」とだけ返ってくる。カルテに転記できる形になっていないので、受付が結局もう一度聞き直すことになります。
事前問診は、選択式の入力欄で取るのが実用的です。症状の開始時期を日付で選ばせる、食欲を「いつも通り」「少し減った」「まったく食べない」の3択にする、便の状態を選ばせる。選択式にすれば答えが揃い、そのままカルテに貼れます。自由記述の欄は最後に1つだけ残して、そこに書かれたことだけを受付が読む。この形にすると、受付が読む文章量が劇的に減ります。
予約の確定と事前問診を同じ画面の中で続けて取れるなら、飼い主にとっても手間は1回で済みます。予約を押さえた直後、記憶が新しいうちに症状を書いてもらえるので、内容の精度も上がります。来院の直前に思い出して書くよりも、具体的な経過が残ります。
切り替えるときは、LINEを止めてから始めない
すでにLINEで予約を受けている病院が、予約画面に移すとき、いちばんよくある失敗が「来月からLINEでの予約受付をやめます」という一斉告知です。これをやると、次の2つが同時に起きます。
1つは、告知を見ていない飼い主からの予約依頼が、そのままトーク画面に届き続けることです。公式アカウントを登録していても、通知を切っている人、告知の翌日に読む人がいます。彼らはこれまで通りメッセージを送ってきて、返ってきた「予約はこちらからお願いします」という案内に戸惑います。結果として、断りの返信という新しい作業が増えます。
もう1つは、スマートフォンの操作に不慣れな層の離脱です。動物病院の顧客には、高齢の飼い主が一定の割合で含まれます。長く一緒に暮らしてきた犬や猫が高齢になり、通院の頻度が上がっている家庭です。この層にとって、新しい画面で日時を選ぶという操作は、決して自明ではありません。予約の方法を変えた月に、この層の来院が落ちることがあります。
切り替えは、次の順番で進めるほうが安全です。
・まず、予約画面を用意して、LINEのリッチメニューの目立つ位置に置く。トーク画面での受付は止めない ・リマインドの通知に、予約画面への導線を入れる。通知を見て予約する人が自然に新しい経路を通る ・トーク画面に予約依頼が来たら、これまで通り受けたうえで、返信の末尾に「次回からはこちらからも取れます」と1行だけ添える ・トーク画面からの予約依頼が全体の2割を切ったあたりで、電話と予約画面の2本立てに寄せる案内を出す ・電話での受付は、最後まで残す。高齢の飼い主と、急を要する相談の受け皿として必要です
この移行には、少なくとも3か月は見ておいたほうがよいと言われています。予防シーズンをまたぐ形で進めると、年に1回しか来ない飼い主にも新しい経路を通ってもらえるので、切り替えが1周します。
公式アカウントの通数と、送る内容の設計
LINE公式アカウントは、送信するメッセージの通数によって料金の区分が変わる仕組みになっています。具体的な通数の区切りと金額は改定されることがあるため、導入を検討する段階で必ず公式の料金ページで最新の内容を確認してください。ここで押さえておきたいのは金額そのものではなく、通数に上限の考え方があるという事実が、送る内容の設計に影響するという点です。
登録している飼い主全員に一斉配信をすると、通数はその人数分だけ消費されます。年末年始の休診案内のような、全員に関係する内容であれば妥当です。一方で、犬の飼い主にしか関係しないフィラリアの案内を猫の飼い主にも送ると、通数を消費しながら、受け取った側には無関係な通知が届きます。無関係な通知が続くと、ブロックされます。一度ブロックされると、本当に必要な休診の案内も届かなくなります。
送る時刻も、動物病院では考えどころです。診療時間の直前に予防の案内を出すと、開院と同時に電話が鳴り始めます。受付が朝いちばんの会計と問診票の案内をしている時間に、予約の電話が重なる形です。夜の20時台に出しておけば、飼い主は帰宅後に落ち着いて読み、自分で枠を押さえてくれます。翌朝の受付は、すでに埋まった予約表を見て1日を始められます。通知を出す時刻ひとつで、受付の朝の負荷は変わります。
したがって、配信は絞って出すことが前提になります。絞るためには、どの飼い主がどの動物を飼っているかという情報が、配信の仕組み側にある必要があります。ここが、トーク画面だけで運用している病院の弱点です。トークの履歴を遡れば書いてありますが、それを条件にして抽出することはできません。
予約を受ける画面の側に動物の情報が溜まっていれば、犬の飼い主だけ、前回の混合ワクチンから11か月が経った子だけ、といった絞り込みができます。通数の消費を抑えながら、受け取った人にとって意味のある通知だけを出せます。この違いは、飼い主数が1000件を超えたあたりから、はっきりした差になって表れます。
料金の考え方そのものについては、ツールの側にも区分があります。料金に条件が書かれているので、LINE公式アカウントの費用と合わせて、月あたりの合計でいくらになるかを見ておくと判断しやすくなります。
予約データから読み取れること
予約を画面で受けるようにすると、これまで紙の台帳とトーク履歴に散らばっていた情報が、集計できる形になります。動物病院の場合、そこから見えてくるものには特徴があります。
まず、季節の偏りが数字ではっきり出ます。狂犬病予防注射とフィラリアの開始が重なる4月から6月に予約が集中し、真夏と真冬は落ちます。この山と谷は毎年ほぼ同じ形で繰り返されるため、前年の数字があれば、翌年の人員配置とワクチンの発注量を先に決められます。トーク画面の履歴を数えてこれを出そうとすると、集計だけで丸一日かかります。
次に、診療内容ごとの所要時間の実績が取れます。予約時に選ばれた診療内容と、実際の診察開始から会計までの時間を並べると、枠の見積もりが合っているかどうかが分かります。「初めての受診」を30分で設定していたのに実績の中央値が42分だった、という事実が出れば、枠を伸ばすか、問診票を事前に書いてもらうかという次の判断に移れます。
もうひとつ、再来院の間隔が見えます。予防で来た飼い主が、その後に一般診療で来ているかどうか。予防だけで来て他は来ない層が厚いなら、健康診断の案内をその層に絞って出す、といった打ち手が立ちます。
変更とキャンセルの記録も、同じ場所に溜まります。動物病院の予約変更には、他の業種にない理由が混ざります。「昨日から調子が良くなったので様子を見ます」「逆に悪化したので今日診てほしい」「別の子が急に食べなくなったので、そちらを先に診てほしい」。この3つ目は、予約を取り消すのではなく、対象の動物を差し替える依頼です。トーク画面のやり取りでは、これが「キャンセル」として処理されて、実際には来院しているという記録の食い違いが起きます。変更として記録できる形にしておけば、当日の来院数と予約数が合わなくなる原因が減ります。
さらに、時間帯ごとの埋まり方が見えます。多くの動物病院は午前と午後で診療時間が分かれており、その間に手術と処置の時間が入ります。予約の埋まり方を時間帯別に並べると、午前の開始直後と午後の終了間際に偏っていることが多い。飼い主が仕事の前後に来るからです。偏りが数字で見えれば、混む時間帯の枠を短く刻む、空いている時間帯に予防の枠を優先的に出す、といった調整ができます。この調整を勘でやると、スタッフごとに感覚が違うため合意が取れません。数字があれば話が早く終わります。
これらはいずれも、予約が構造化されたデータとして残っていて初めて可能になります。トーク画面に残るのは会話であって、データではありません。他の道具と比べてどこが違うのかは他社との比較にまとまっています。実際の画面の動きを見たい場合はデモを見るから確認できます。導入前に出やすい疑問はよくある質問に集めてあるので、院内で検討する際の材料にしてください。
なお、飼い主の氏名、住所、電話番号は個人情報にあたります。どの範囲まで保存し、誰が閲覧できるようにするかは、院内で扱いを決めておく必要があります。個人情報の取り扱いに関する一般的な考え方は個人情報保護委員会の案内が参照先になります。具体的な運用の可否について判断に迷う場合は、所管の窓口や専門家に確認してください。
Q1. LINEでの予約受付を完全にやめるべきですか?
やめる必要はありません。飼い主にとってLINEは最も連絡しやすい手段で、予防のリマインドも高い開封率で届きます。分けるべきなのは、日時と診療内容と対象の動物を確定させる工程です。そこだけを予約画面に渡し、LINEは通知と相談の窓口として残す形が、受付の負担をいちばん減らします。
Q2. 多頭飼いの飼い主の予約は、どう受ければ取り違えませんか?
予約の入口で、その飼い主に登録されている動物の一覧から選ばせる形にしてください。何頭連れてくるかで診察室の滞在時間が変わるため、頭数も同時に取ります。トーク画面で名前だけ書かれても、どの子か特定できず、押さえる枠の長さも決まりません。
Q3. 診療時間外に届く急変の連絡には、どう備えればよいですか?
時間外の自動応答を必ず設定し、その中に地域の夜間救急動物病院の名称と電話番号を文字で直接書いてください。あわせて、けいれん、呼吸が苦しそう、猫で尿が出ていない、といった今すぐ連絡すべき症状を具体的に列挙します。リンクだけでは、慌てている飼い主は押しません。
Q4. LINEで症状の相談に答えてもよいのでしょうか?
獣医師法は、自ら診察しないで診断書を交付することや、一定の医薬品の投与と処方を禁じています。写真や文章だけで診断や処方に踏み込むことはできません。受診の必要性の目安や来院の案内にとどめ、判断に迷う場合は所管の窓口や専門家に確認してください。