guide

鍼灸院の予約システムをどう選ぶか|業態で変わる、外せない条件

2026年9月14日・Rizaflow編集部

鍼灸院で予約の仕組みを入れ替えようとすると、候補に出てくるのはたいてい美容室やネイルサロン向けに作られたものです。機能の一覧はどれも似ていて、ネット予約、リマインド、顧客管理と並んでいます。ところが実際に設定を始めると、鍼灸院だけが引っかかる箇所が次々に出てきます。枠の長さ、画面に出る言葉、問診の置き場所、往療の扱い。この記事は、鍼灸院という業態で外せない条件を先に固めて、そこから候補を削るための手順です。機能の多さで選ぶと、使わない画面が増えるだけで、鳴り続ける電話は減りません。

鍼灸院の予約は、1人を長く預かる形をしている

まず押さえるべきは、鍼灸院の1日の埋まり方が、他の店舗型サービスとまったく違う形をしていることです。

多くの予約システムは、短い施術を数多く回す前提で組まれています。15分刻みの枠を並べ、スタッフを横に何人も置き、同じ時間帯に複数の予約を重ねる。カット、カラー、まつげ、ネイルはこの形に収まります。1日に10人から15人を受け、途中で1人が来なくても、別の予約が前後にあるので損失は限定されます。

鍼灸院はこの形に入りません。問診と施術と説明を合わせると、初回は90分から120分かかります。2回目以降でも60分前後が普通です。施術者が1人なら、1日に受けられるのは5人から7人で頭打ちになります。縦に長い枠が数本並ぶだけの、すかすかしたカレンダーです。

この構造から、鍼灸院にとっての損失の意味が変わります。1本の予約が無断で飛ぶと、その日の売上の6分の1から5分の1が消えます。しかも空いた90分を飛び込みで埋めることはまずできません。予約なしで通りかかった人が入ってくる業態ではないからです。

だから鍼灸院で予約の仕組みに求めるものは、「新規をたくさん取りこぼさないこと」より先に、「入っている予約が変更になったとき、前日までに連絡が来ること」になります。ここを取り違えると、集客の機能が並んだ道具を入れて、空き枠だけが増えます。

もうひとつ、施術中に手が離せない度合いも違います。鍼を刺している最中に電話を取ることはできませんし、抜鍼の途中で中断もできません。受付に人を置いていない1人院なら、施術時間帯はまるごと応答不能です。つまり、営業時間の大半が電話に出られない時間です。この前提で受け方を組み直すのが、鍼灸院の予約の出発点になります。

初回と2回目以降で所要が違う。この1点で候補が半分に減る

鍼灸院の設定でいちばん最初に詰まるのが、初回と再来で必要な時間が違うことです。

初回は、主訴の聞き取り、既往と服薬の確認、体表の観察、施術方針の説明が入ります。ここに30分前後を使い、施術そのものが60分。合計で90分を超えます。2回目以降は前回からの変化を確認するだけなので、同じ内容でも60分で終わります。この差30分を予約枠にどう反映させるかで、1日の受入人数が1人変わります。

やり方は2つに分かれます。1つは、メニューを「初回」と「2回目以降」に分けて、それぞれに所要時間を持たせる方法です。設定は簡単ですが、常連が間違って初回メニューを選ぶ事故が起きます。逆に初めての人が通常メニューを選ぶと、当日に30分足りません。予約が入ったあとに院側で枠を伸ばせるかどうかが、この方式を選べるかの分かれ目になります。

もう1つは、その連絡先での来院履歴を見て、初回の人だけ自動的に長い枠を割り当てる方法です。患者側は1つのメニューを選ぶだけで済みます。ただしこの動きを持っている道具はそう多くありません。候補を絞る段階で、この1点を聞くだけで残る数は半分以下になります。

前後のバッファも忘れないでください。ベッドの片付け、鍼の廃棄、手指の衛生、施術録の記入で、実際には10分から15分が必要です。この時間を予約枠の中に含めるか、枠の後ろに自動で確保するかは、道具によって扱いが違います。含める方式だと、患者側の画面に表示される所要時間が実際より長く見えます。後ろに確保する方式のほうが自然ですが、その設定項目が無いものもあります。

確認は言葉ではなく、実際の画面で行ってください。同じ日に初回120分と再来60分を2本続けて入れ、片付けの15分が両方の後ろに入るかを見る。ここまで再現できて初めて、その道具が鍼灸院の枠を扱えると言えます。何ができるかはできることのページで機能の範囲を確かめられますが、最終的な判断は自分の枠を1日ぶん入れてみないと付きません。

画面に出る言葉を書き換えられるか。鍼灸院には使えない表記がある

これは他の業態にはまったく無い、鍼灸院と接骨院だけの条件です。予約システムの既定のラベルが、そのままでは使えないことがあります。

はり師きゅう師の施術所が広告できる事項は法律で限定されていて、厚生労働省がその解釈と運用を指針にまとめています。指針では、施術日や施術時間の表記について、医療と紛らわしい書き方を認めないとしています。

施術日及び施術時間は、利用者に対し提供するべき情報であるので、可能な限りあはき・柔整に関する広告においても記載するのが望ましい。ただし、医療と紛らわしく、診療を必要とする状態の者の適切な診療を受ける機会や施術所等の利用を希望する者の適切な施術を受ける機会を阻害するおそれがある表記は認められない。 出典: mhlw.go.jp

同じ指針は、広告不可な事項の例として、診療日や診療時間、診察日や診察時間、休診日、初診、再診、往診といった表記を具体的に挙げています。広告可能な側には、受付時間、施術曜日、休日や休療日、そして初検、再検、往療、施療といった書き方が並びます。

ここが予約システムの選定に直結します。既定のラベルが「診療時間」「初診料」「休診日」になっている道具は珍しくありません。医科や歯科を主な顧客に想定して作られたものなら、むしろその表記のほうが自然です。それを「施術時間」「初検料」「休療日」に書き換えられるか。書き換えの範囲がどこまでかを、契約前に確かめてください。

確認すべきは3か所です。1つ目が予約ページに出る見出しと項目名。2つ目が自動で送られる予約完了メールと前日の通知メールの文面。3つ目が、予約ページを外部に埋め込んだときのウィジェット内部の文字です。1つ目だけ直せて2つ目が固定という作りが実際にあります。通知メールに「診察のご予約」と書かれて自動送信されると、こちらの意図と関係なくその文言が出ていきます。

なお指針は、インターネット上のウェブサイト等は原則として広告規制の対象にはならないとしたうえで、掲載内容の適切な在り方を別途定めています。検索結果に連動して表示される情報やリスティング広告は広告として扱われるとも書かれています。予約ページに広告から直接人を流す設計にするなら、文言の扱いはより慎重にしてください。判断に迷う表現は、所管の保健所や都道府県の窓口に確認してから公開するのが確実です。

メニュー名に効能を書けない。名前の一括変更ができるかを見る

文言の制約は、時間の表記だけでは終わりません。メニューの名前にも及びます。

指針は、施術所の名称として広告できない例に、施術内容や技能や方法を含んでいる名称、効能を含んでいる名称を挙げています。具体例として、東洋医学、美容鍼灸、不妊鍼灸、更年期障害、無痛治療といった語や、姿勢改善、小顔矯正、骨盤矯正といった語が並びます。ウェブサイト等に掲載すべきでない事項の側にも、治ります、根本治療、何々に効きます、何々の治癒率何パーセント、といった表現が具体例として書かれています。

鍼灸院がメニューを組むとき、この線引きは実務に食い込みます。集客のために「自律神経を整える鍼」「不妊専門コース」といった名前を付けたくなりますが、そこは慎重に判断すべき領域です。何をどこまで書けるかは表現の細部で変わるので、迷う名前は事前に窓口へ確認してください。

予約システムの選定という観点で見ると、ここから2つの条件が出てきます。

1つは、メニュー名を後からまとめて直せるかどうかです。鍼灸院はメニューの数が10から20になることが多く、指摘を受けて表現を見直すとき、1つずつ画面を開いて直す作りだと半日仕事になります。しかも予約ページ、通知メール、埋め込みウィジェットの3か所に同じ名前が出るなら、直す場所も3倍です。

もう1つは、メニューの説明欄にどれだけの文章を置けるかです。指針は、自費による施術を行う施術所がウェブサイト等に掲載すべき事項として、施術の内容と通常必要とされる費用に関する情報の提供を挙げています。

自費による施術は、医療保険療養費による施術とは異なり、その内容や費用が施術者又は施術所等ごとに大きく異なり得るため、その内容を明確化し、料金等に関するトラブルを防止する観点が重要であること。標準的な費用が明確でない場合には、通常必要とされる施術の最低金額から最高金額までの範囲を示す等して可能な限り分かりやすく示すこと。 出典: mhlw.go.jp

指針は続けて、主なリスクや副作用に関する事項についても情報を提供すること、そしてこれらを利点や長所と比べて極端に小さな文字で載せる形は控えることを求めています。つまり予約ページのメニュー説明は、飾りではなく載せるべき情報の置き場所です。説明欄が100文字で切れる仕様の道具だと、この要請に応えられません。文字数の上限と、改行や箇条書きが使えるかを、契約前に必ず見てください。

保険を扱うかどうかで、予約に付ける項目が変わる

鍼灸院の保険の扱いは、接骨院とは根本的に違います。ここを混同したまま道具を選ぶと、あとで手作業が残ります。

厚生労働省は、はり・きゅうの施術で保険が使える範囲を次のように説明しています。

主として神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症及び頸椎捻挫後遺症等の慢性的な疼痛を主症とする疾患の治療を受けたときに保険の対象となります。 出典: mhlw.go.jp

同じページは、保険を使うにはあらかじめ医師の発行した同意書または診断書が必要であること、保険医療機関で同じ対象疾患の治療を受けている間は対象にならないことも示しています。接骨院の打撲や捻挫のように、来院したその場で保険の扱いが決まるわけではありません。

この差が予約の設計に効きます。保険で通っている患者は、同意書の有効期間の管理が付いて回ります。次にいつ同意書を取り直す必要があるかを、誰かが把握していなければなりません。予約システムの顧客情報に、日付を持てる自由な項目を追加できるかどうかが、ここで効いてきます。備考欄しか無いと、期限の近い人を一覧で拾えません。

メニューの分け方も変わります。保険の施術と自費の施術では、かかる時間も金額も違います。同じ「はり60分」というメニューに両方を入れると、当日の受付で毎回の確認が発生します。最初から別のメニューとして立て、保険の側には同意書の確認を促す一文を説明欄に入れておくほうが、受付の迷いは減ります。

なお、保険の取り扱いを予約ページにどう書くかにも制約があります。指針は、医療保険療養費支給申請ができる旨の広告を、あはきの施術所については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限るとしています。「各種保険取扱い」という書き方は広告不可な事項の例に挙げられています。予約ページの見出しに何気なく置きがちな表現なので、既存のページも一度見直してください。制度の解釈で判断が付かない部分は、加入している保険者や所管の窓口に確認してから決めるのが安全です。

問診をいつ取るか。予約の直後か、来院してからか

初回の30分を短くしたいなら、問診を来院前に済ませる形が有力です。ただし、置き場所の設計を間違えると別の問題を作ります。

来院前に取る利点は明確です。主訴と既往と服薬を先に読めるので、施術方針を組んだ状態で迎えられます。当日の問診が15分で済めば、1日の枠が1本増える計算になります。字を書くのに時間がかかる高齢の患者にとっても、自宅で落ち着いて入力できるほうが負担が軽くなります。

問題は、そこに集まる情報の性質です。既往歴、服薬、妊娠の有無、通院中の病院。これらは扱いの重い情報です。個人情報の保護に関する法律は、要配慮個人情報を、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などが含まれる個人情報と定めています。鍼灸院の問診票は、その病歴に触れる内容をまとめて預かる書類です。

個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることに鑑み、その適正な取扱いが図られなければならない。 出典: ppc.go.jp

ここから、予約システムに対する具体的な条件が出ます。まず、問診の内容を予約の備考欄に書かせないこと。備考欄は予約一覧に並んで表示される作りが多く、画面を開いた全員の目に入ります。次に、問診の回答を誰が見られるかを分けられること。受付を担当するアルバイトに予約の時間と名前だけを見せ、問診の中身は施術者だけが開ける形にできるかどうかです。権限の分け方が1段階しか無い道具では、この分離ができません。

もう1つ、予約と問診が別々の道具になっているときの手間も見ておいてください。フォームの回答がメールで届き、それを人が予約に突き合わせる運用は、1日6人でも毎日の作業になります。予約の中に問診の回答がぶら下がる形なら、この突合はゼロになります。予約の受付から次の来院までを一続きで扱う作りかどうかは、こういう地味な場面で差が出ます。

往療を同じカレンダーに載せるか、別で持つか

往療を行っている鍼灸院では、院内の枠と訪問の枠をどう並べるかが設計の分かれ目になります。

往療は、指針が広告可能事項として挙げている項目の1つです。出張による施術の実施は、日時も含めて利用者に提供すべき情報とされています。つまり「火曜と木曜の午後は往療」という運用を対外的に示すこと自体は想定されています。

実務上の難所は移動時間です。14時から15時の訪問が終わって、次の訪問が15時30分からだとすると、その30分は移動です。院内の予約枠と同じカレンダーに置くなら、この移動を予約として押さえないと、院内の予約が入ってしまいます。予約枠とは別に、こちらの都合で埋める枠を作れるかどうかが条件になります。

やり方は2通りあります。1つは、往療のための長いブロックを毎週固定で置き、その中を院側の管理で埋める方法です。患者から見ると、その時間帯はそもそも予約できません。地域と曜日を組み合わせて回る形の院に向きます。もう1つは、往療も予約枠として公開し、住所によって所要時間を変える方法です。設定は複雑になりますが、往療の比率が高い院では回転が良くなります。

どちらにしても、往療の記録は院内の施術と分けて残す必要があります。誰の家にいつ行って何をしたかは、後から必ず参照します。予約の履歴に住所と訪問の別が残るか、そこも見ておいてください。業態ごとの組み方の違いは業種ごとの使い方に整理があり、往療のように現場が移動する形をどう表現するかの参考になります。

置鍼の待ち時間をどう扱うか。枠の埋め方で1日の本数が変わる

鍼灸院には、他の業態にほとんど無い時間の使い方があります。鍼を置いたまま15分から20分待つ時間です。

この間、施術者の手は空いています。ベッドが2台あれば、その時間に別の患者の問診を始めたり、別のベッドで施術を進めたりできます。実際、複数ベッドを持つ鍼灸院の多くはこの形で回しています。1日6人が上限だった院が8人になる差は小さくありません。

ところが、予約システムの多くはこれを表現できません。「1つの時間帯に1人の担当者は1件」という前提で作られているからです。同じ15時に2件を入れようとするとエラーになります。回避するには、担当者を2人分登録して、実際は1人が両方を見る形にするしかありません。動きますが、後で予約の履歴を見たときに、誰が何をしたのかが分からなくなります。

もう1つの表現方法は、ベッドを資源として登録することです。担当者ではなくベッドの数で同時に受けられる件数を決め、施術者は別の軸で持つ。この考え方を持っている道具なら、置鍼の重ね方を素直に書けます。設定画面に「設備」や「リソース」に相当する概念があるかどうかで見分けが付きます。

ただし、埋められるからといって埋めるべきかは別の判断です。置鍼の間に別の人を入れると、抜鍼の時機が数分ずれます。それを許容するかは院の方針であり、道具が決めることではありません。まず自分の院がどう回したいかを決めて、それを表現できる道具を選ぶ順番にしてください。逆にすると、道具の制約が施術の中身を決めてしまいます。

料金の見せ方と、決済を必須にするかどうか

鍼灸院の会計は、他の予約業態と条件が違います。ここも選定の分かれ目になります。

まず前払いの前提が薄い業態です。飲食店の席や宿泊のように、予約の時点で金額が確定して決済まで進む形は、鍼灸院ではあまり選ばれません。当日に施術内容が変わることがあり、保険と自費が混ざる患者もいるからです。予約と決済が一体になっていて、決済を通さないと予約が確定しない作りの道具は、この時点で候補から外れます。決済が必須ではない業態に合わせて、予約の受付から次の来院までをつなぐ作りかどうかを見てください。

回数券や前売りの扱いも確認が要ります。指針は、回数券やプリペイドカード等を販売する場合に、その商品の内容や契約内容を利用者が正確に理解して購入できるよう表示することを求めています。予約システム側に回数券の残数を持たせるなら、残りが何回で、いつまで有効かを患者が自分で確認できる形になっているかを見てください。院の手元の紙だけで管理していると、残数の食い違いが必ず起きます。

料金そのものの見せ方では、指針が求める最低金額から最高金額までの範囲の提示を、どこに置くかが問題になります。メニュー一覧に1つずつ金額が並ぶだけだと、追加の鍼が入ったときの上限が見えません。メニューの外に説明のブロックを置けるか、そこに表を入れられるかを確かめてください。

道具そのものの費用も、鍼灸院の規模で計算し直す必要があります。施術者が1人で1日6人なら、月の予約件数は130件前後です。件数ごとに費用がかかる形と月額固定の形では、この件数帯での有利不利がはっきり分かれます。条件は料金で公開されている範囲を確かめたうえで、自分の件数を当てはめて計算してください。プランは変わるので、比較の日付を控えておくと後で見直しが楽になります。

選ぶ順番。試す前に3つだけ決めておく

候補を触り始める前に、院の側で決めておくことが3つあります。ここが決まっていないと、どの道具も良く見えてしまいます。

1つ目は、1日に何人を受けるかです。上限を6人と決めるのか、置鍼を重ねて8人にするのか。この数字が、必要な枠の作り方とベッドの扱いを決めます。

2つ目は、保険を扱うかどうかです。扱うなら同意書の期限を持つ項目が要り、メニューの分け方も変わります。扱わないなら、その分だけ設定は軽くなります。

3つ目は、電話をどこまで残すかです。全部ネットに寄せるのか、新規だけネットにして継続は電話のままにするのか。ここを決めずに導入すると、両方の窓口から予約が入って二重の管理になります。

この3つが決まったら、候補を実際に触ります。読むだけでは分かりません。デモを見るで実物の画面に触れれば、初回と再来を続けて入れたときの動きや、片付けの時間が後ろに入るかを自分の目で確かめられます。他の道具との違いをまとめて見たいときは他社との比較に対応する範囲が並んでいるので、自分が外せないと決めた条件を1つずつ照らしてください。

比較の途中で出てくる細かい疑問は、よくある質問に答えが置かれていることがあります。設定の手順や、いま使っている仕組みからの移し替えについての疑問は、営業に聞く前にここで潰しておくと話が早く進みます。

いま通っている患者をどう移すか。ここで失敗する院が多い

道具を決めたあと、最後に残るのが既存の患者の移し替えです。鍼灸院はここが他の業態より難しくなります。

理由は患者の年齢層です。慢性の疼痛で通う人が中心になるため、60代以上の割合が高くなります。予約ページの案内を紙で渡しても、その場で開いてもらえないと、次の来院までに忘れられます。「ネットでも取れるようになりました」とだけ伝えて終わると、実際にネットから入る予約はほとんど増えません。

移し方には順番があります。まず、施術が終わって会計をしている数分の間に、その場で1回だけ操作してもらうこと。次回の予約をその場でネットから入れてもらえば、一度で仕組みが伝わります。紙の案内を渡すのは、その操作を済ませた後です。

次に、既存の患者の連絡先を先に登録しておくことです。名前と電話番号だけでも入っていれば、その人が予約ページから入ったときに新しい患者として二重に登録されずに済みます。名寄せは後からやるほど面倒になります。移行の前に、手元の台帳を電話番号の書き方だけでも統一しておいてください。ハイフンの有無が混ざっていると、突き合わせが利かなくなります。

そして、電話を急に止めないことです。ネット予約を始めた翌月に電話番号を目立たない場所へ動かすと、長く通っている人ほど戸惑います。3か月は両方を同じように受け、ネット経由の割合が上がってから、電話に出られない時間帯の案内を整えるほうが摩擦が少なくなります。

移行の期間中に必ず起きるのが、同じ人が電話とネットの両方から予約を入れてしまう二重予約です。90分の枠が2本重なると、その日は1人しか受けられません。電話で受けた予約を、受けたその場で予約システムに入れる運用を最初から徹底してください。紙のノートを並行して残すと、必ずどちらかが古くなります。

入れたあとに何を見るか

道具を入れた効果は、感覚では分かりません。数えるものを最初に決めておいてください。

見るべき数字は3つです。1つ目が、予約全体のうちネット経由が占める割合。導入直後は2割程度で、既存の患者が慣れるにつれて上がっていきます。半年経っても3割を超えないなら、予約ページの入口が見つかりにくいか、既存患者への案内が足りていません。

2つ目が、変更や取り消しの連絡が前日までに入った割合です。鍼灸院にとって、これが最も金額に効きます。90分の枠が前日に空けば、待っている人に声をかけられます。当日の朝に空いても埋まりません。前日の通知を送るようにして、この割合がどう動いたかを月ごとに並べてください。

3つ目が、前回の来院から次の予約までの日数です。鍼灸は継続で効果が出る施術なので、間隔が開くほど積み上げが崩れます。施術後に次回の目安を伝えているのに間隔が伸びているなら、伝え方ではなく、予約を取る手段が面倒である可能性が高いところです。

この3つは、どれも予約の記録があれば集計できます。逆に言えば、予約の記録が電話のメモとノートに散っている間は、どれも数えられません。数えられる状態にすること自体が、道具を入れる目的の半分です。何をどこまで記録できるかは道具によって差があるので、できることで記録の範囲を確かめてから決めてください。

Q1. 鍼灸院に美容室向けの予約システムを使っても問題ありませんか?

枠の長さと文言の2点で無理が出ます。多くは15分刻みの短い施術を前提にしているため、90分から120分の枠と初回の延長を素直に表現できません。加えて既定のラベルが診療時間や初診となっている場合、はり師きゅう師の施術所では使えない表記です。書き換えられるかを契約前に確かめてください。

Q2. 予約ページに「各種保険取扱い」と書いてもよいですか?

厚生労働省のあはき・柔整広告ガイドラインでは、広告不可な事項の例として挙げられています。医療保険療養費支給申請ができる旨を示す場合は、医師の同意が必要な旨を明示することが条件とされています。表現に迷うときは、公開前に所管の保健所や都道府県の窓口へ確認してください。

Q3. 問診票を予約の備考欄に書いてもらうのは避けたほうがよいですか?

避けたほうが安全です。備考欄は予約一覧にそのまま表示される作りが多く、既往歴や服薬といった扱いの重い情報が受付の画面に並びます。問診は別の欄に分け、施術者だけが開ける形にできるかどうかを、道具を選ぶ段階の条件に入れてください。

Q4. 導入して効果が出たかどうかは、何を見れば分かりますか?

3つの数字を月ごとに並べてください。予約全体に占めるネット経由の割合、前日までに変更や取り消しの連絡が入った割合、前回の来院から次の予約までの日数です。鍼灸院では1本の枠が90分と長いため、2つ目が最も金額に効きます。

ガイド一覧へ