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鍼灸院の回数券とチケットを管理する|残数の数え方と、期限の決め方
2026年9月14日・Rizaflow編集部
鍼灸院の回数券は、美容室のそれとは性質が違います。売っているのは施術の回数ですが、患者が期待しているのは体の変化で、その変化は回数で保証できるものではありません。ここを曖昧にしたまま券を作ると、期限の設定でも、途中でやめたいと言われたときの対応でも、必ず困ることになります。ここでは、回数券を出すかどうかの判断から、綴り数と有効期限の決め方、残数の数え方、辞めたいと言われたときの扱いまでを順に置いていきます。
保険で施術している患者に、回数券は使えません
最初にはっきりさせておく必要があるのが、療養費との線引きです。
健康保険を使った施術は、1回ごとに施術の事実にもとづいて扱われます。まとめて前払いを受けて、そこから回数を引いていく形とは、そもそも仕組みが噛み合いません。回数券が使えるのは、自費で受ける施術に限られます。
この線引きを、患者に説明できる形で持っておいてください。保険で通っている患者から「回数券はありますか」と聞かれたとき、その場で説明できないと、後で誤解が残ります。同じ患者が、保険の施術と自費の施術を両方受けている場合はさらに紛らわしくなります。
・回数券が使えるのは、自費の施術だけ ・同じ患者が保険と自費の両方を受ける場合、回数を引くのは自費の分だけ ・台帳の上で、その日の施術が保険か自費かを見分けられる状態にしておく
台帳が保険と自費を区別できない作りだと、この線引きは運用でしか守れません。運用でしか守れないものは、忙しい日に崩れます。
「何回で治る」という売り方は、そもそもできません
回数券を作るときに、いちばん危ないのが売り文句です。
施術所とその業務に関する広告は、書ける事項が法律で限定されています。効き目や、施術方法の優位性を示す記述は、この制限にかかります。「10回で腰痛が取れる回数券」のような打ち出し方は、その時点で線を越えます。
券の名前、院内の掲示、ホームページの記載、会計の場での説明。すべてが対象です。判断が微妙な表現については、所管の保健所や専門家に確認してください。
では何を書けるかというと、価格と回数と有効期限、つまり取引の条件です。
・回数……5回綴り、10回綴り ・1回あたりの金額と、合計の金額 ・有効期限 ・使える施術の種類
条件だけを並べる形にすれば、迷いません。「続けて通う方向けにご用意しています」までは案内の範囲ですが、その先の効き目に踏み込まないでください。
綴り数は、通院の間隔から逆算して決める
5回にするか10回にするかは、金額の見栄えで決めるものではありません。患者が実際に通う間隔から逆算します。
症状が強くて週1回来る人が10回綴りを買えば、2か月半で使い切ります。月1回の維持で通う人が同じ10回綴りを買えば、使い切るのに10か月かかります。同じ券でも、意味がまったく変わります。
・週1回のペースの人……5回か6回綴り。1か月半ほどで使い切る ・2週に1回のペースの人……6回綴り。3か月ほど ・月1回の維持の人……回数券より、間隔を空けた案内のほうが合う
維持で通う人に長い綴りを売ると、期限との相性が悪くなります。売った側は前受けができて嬉しいのですが、使い切れない券が増えると、後で説明する失効の問題が起きます。
綴り数を1種類に絞る必要はありません。ただし、種類が5種類を超えると、会計の場で説明できなくなります。2種類か3種類が扱いやすい範囲です。
有効期限には、法律上の線が1つある
有効期限を何か月にするかは、経営の判断だけで決まる話ではありません。前払いで受け取った金額に対して、法律上の扱いが変わる線が1つあります。
資金決済に関する法律には、前払式支払手段についての章があり、その中に適用しない場合を並べた条文があります。そこには、発行の日から政令で定める一定の期間内に限り使用できるものが挙げられており、その期間は施行令で6か月と定められています。
つまり、有効期限を6か月以内にするかどうかで、扱いが変わります。長い期限を設定して、未使用の残高が積み上がっていく形にするなら、届出や保全の義務が関わってくる可能性があります。自分の院がどの位置にいるかは、金額の規模によって変わるため、専門家や所管の窓口に確認してください。
実務上は、6か月を最初の目安に置いている院が多く見られます。これは法律の線と、患者が実際に使い切れる期間の両方から見て、扱いやすい長さだからです。週1回で6回綴りなら、余裕をもって使い切れます。
期限が切れたときの対応を、売る前に決めておく
期限を決めたら、次に決めるのが、切れたときにどうするかです。ここを決めずに売ると、切れた人が来るたびに、その場の空気で判断することになります。
判断が人によって違うと、後で必ず揉めます。「前の人は延ばしてもらえたのに」という話になります。
・切れた券は使えないと決めるなら、券にも掲示にもそう書く ・延長を認めるなら、条件を決める。入院や出産、長期の出張など ・延長の期間を決める。1か月か3か月か ・延長を認めた記録を、台帳に残す
鍼灸院に特有なのは、期限が切れる理由が体調である場合が多いことです。腰を痛めて動けなかった、入院していた、家族の介護が始まった。こうした事情で来られなかった人に、機械的に失効を伝えるのは筋が通りません。条件を決めておけば、その場の判断ではなく、決めた規則として説明できます。
途中でやめたいと言われたときの扱い
回数券を買った人が、3回使ったところで「もう来られなくなった」と言ってくることがあります。転居、転職、症状の解消、他の医療機関にかかることになった。理由はさまざまです。
このときの扱いを、売る前に決めておく必要があります。返金しないと決めるにしても、その条件を最初に伝えていなければ、後から主張しにくくなります。
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分 出典: e-Gov法令検索(消費者契約法)
同じ条文の第2項では、消費者から説明を求められたときに、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないとも定められています。
具体的にどこまでの取り決めが有効かは、契約の内容や事情によって判断が分かれるため、規約を作るときは専門家に確認してください。実務として押さえておきたいのは、次の3つです。
・返金の条件を、売る前に文字で示す ・使った回数の扱いを決める。割引前の1回分の価格で計算するのか、割引後で計算するのか ・説明を求められたら、計算の根拠を示せるようにしておく
割引前の価格で計算する形にしている院が多く見られますが、その計算方法自体を、買うときに示しておく必要があります。使った後で初めて知らされる条件は、納得を得られません。
残数を数字で書くと、必ずずれます
紙の券に判を押していく形なら、残数は券を見れば分かります。券を持ってこない患者が出た時点で、この方法は崩れます。
台帳の側に残数を持たせる場合、よくある失敗が「残り4回」と数字で書いて、使うたびに書き換える運用です。この形は必ずずれます。書き換え忘れが起きるからです。
正しくは、売った履歴と使った履歴を別々に残して、残数は計算で出す形にします。
・6回綴りを、いつ、いくらで売ったか ・その券を、いつ、どの施術で使ったか ・残数は、この2つの差として表示される
こうしておけば、書き換え忘れが起きません。ずれたときも、どの記録が抜けているかを追えます。数字だけを持つ形では、ずれた原因が分かりません。
ずれたときの対応も決めておいてください。多くの院では患者の申告に合わせます。1回6,000円の施術で、月に2件のずれが出れば、年間で14万4千円ほどの負担になります。この数字を出しておくと、記録の仕組みに手をかける理由がはっきりします。
誰が使えるかを、券ごとに決める
家族で通っている患者から、自分の券を配偶者にも使わせてよいかと聞かれます。決めていないと、その場で答えられません。
鍼灸院では、この判断に注意が要ります。券を分け合えるようにすると、施術録の紐付けが崩れます。誰にどの施術をしたかの記録は患者ごとに残りますが、券の消費が別の人の名義で進むと、後から履歴を追いにくくなります。
・本人限りにする……記録が素直に残る。家族から不満が出ることがある ・家族間で使えるようにする……喜ばれるが、誰の分を何回使ったかを別に記録する必要がある ・譲渡を認めない……知人に譲られた券で、初めての人が来るのを防げる
初めての人が他人の券で来ると、問診も同意も済んでいない状態で施術に入ることになります。ここは券の話ではなく、施術の安全の話です。譲渡については、認めない方向で決めておくほうが無難です。
施術者の指名と、券の結び付け方
施術者が複数いる院では、券が誰の施術に使えるかも決める必要があります。
指名を取っている院では、指名料の扱いが問題になります。券に指名料が含まれるのか、別に頂くのか。含めないと決めるなら、券を使う日にも指名料の会計が発生します。会計の場で説明できるよう、券の裏面か案内に書いておいてください。
指名する施術者を固定した券にすると、その人が休んだ日に使えません。使えない日があると、患者は不便を感じます。院の誰でも使える形にして、指名料だけ別に頂くほうが、運用が単純になります。
美容鍼の回数券は、治療の券と分けて考える
美容鍼を扱っている院では、券を分けたほうがうまくいきます。
理由は、通う間隔と、券に期待されるものが違うからです。美容鍼は継続して受ける前提で来る人が多く、間隔も詰まりがちです。一方で、体の治療で来ている人は、症状が落ち着けば間隔が空きます。
同じ券を両方に使えるようにすると、施術時間の差が問題になります。90分の美容鍼と40分の治療が、同じ1回として引かれると、券を使う側は長いほうを選びます。券ごとに使える施術の種類を決めておいてください。
往療で回数券を使えるかどうか
訪問して施術する往療でも、自費で受けている場合には券が使えます。ただし、往療料の扱いを決める必要があります。
往療には移動が伴います。施術40分に往復50分の移動が付けば、院内の施術と原価が違います。券の1回を院内と同じ扱いにすると、訪問のたびに損が積み上がります。
往療用の券を別に作るか、券は施術の分だけに使い、移動の分は別に頂くか。どちらかを決めて、家族にも説明してください。往療では支払う人が本人でないことが多く、説明の相手が変わります。
会計の上では、売った時点では売上ではありません
回数券を売った日に、その全額が売上になるわけではありません。前払いで預かった金額であり、施術を提供して初めて売上になる性質のものです。
このため、券が売れた月の入金は多くなりますが、その分だけ翌月以降の入金が減ります。券の売上を月の実績として見ていると、実際より良く見える月と、悪く見える月が交互に来ます。
・預かった金額の合計 ・そのうち、施術を提供して消化した金額 ・まだ消化していない金額
この3つを分けて見られる状態にしておいてください。具体的な会計の処理については税理士に確認する話になりますが、数字を分けて持っておかないと、確認する材料自体が作れません。
値引きの幅を、感覚で決めない
6回綴りをいくらにするかは、1回あたりいくら下げるかの判断です。
1回6,000円の施術を6回綴りで33,000円にすれば、1回あたり5,500円で、500円の値引きです。この500円で何を買っているのかを、はっきりさせておいてください。
買っているのは、継続して来てもらうことと、前払いによる資金の回転です。値引きの幅を大きくすれば売れますが、券を使う期間の売上単価が下がります。1割を超える値引きにすると、券を持っている患者ばかりが施術枠を埋め、単価の高い新規が入れない時間帯が出ることがあります。
値引きの幅と、券の保有者が枠に占める割合は、あわせて見てください。片方だけ見ていると、売れているのに利益が減る状態に気付けません。
券を紙で出すか、記録だけで持つか
紙の券には、手に取れるという強さがあります。財布に入っていれば、来院の動機になります。
一方で、紛失、忘れ、汚れ、判の押し忘れが起きます。紛失したときにどうするかを決めていないと、その場で対応が分かれます。
記録だけで持つ形にすると、これらは消えます。代わりに、患者が自分の残数を知る手段が要ります。会計のたびに口頭で伝えるか、本人が見られる形にするか。伝えないままだと、患者の側に不安が残り、券を買う人が減ります。
・紙で出すなら、紛失時の扱いを先に決めて、券にも書く ・記録で持つなら、残数を患者が知る手段を用意する ・どちらにしても、院の側の記録は台帳で持つ
紙の券だけを正として、院の側に記録がない状態がいちばん危ない形です。券が失われた時点で、何も分からなくなります。
施術者が辞めるとき、休院するときの扱い
回数券は、先の施術を約束するものです。約束した側の事情が変われば、対応が要ります。
指名の施術者が退職した場合、その人を目当てに券を買った患者が残ります。他の施術者で使ってもらうのか、残数分を返すのか。方針を決めておかないと、退職の連絡と同時に混乱します。
長期の休院や、移転による通いにくさも同じです。患者の側に落ち度がない事情で使えなくなった券について、どう扱うかは、事前に規約へ書いておくのが筋です。書いていない状態で個別に対応すると、対応の差が後から問題になります。
使い切った後の1回が、いちばん抜けやすい
券を使い切った日は、次の予約が取りにくい日でもあります。
会計の場で、次の券を買うかどうかの話になり、その場で決められない人は「また考えます」と言って帰ります。予約も取らずに帰ることになり、そのまま来なくなる。鍼灸院で回数券を扱っている院の、いちばん大きな取りこぼしがここです。
券の残りが1回になった時点で、次の話を始めてください。最後の1回を使う前に、次の券を買うか、券なしで通うか、間隔を空けるかを決めておけば、使い切った日に空白ができません。
残数が1回になったことを、台帳の側で教えてくれる形になっていると、この声かけが漏れません。人の記憶に頼ると、忙しい日から漏れていきます。
予約と券を別々に管理すると、二度手間が生まれる
券の管理を、予約とは別の帳面や表計算で持っている院があります。この形は、記録が二重になります。
来院があったことは予約の側に記録され、券を使ったことは別の表に記録される。片方だけ書いた日が出ると、突き合わせが必要になります。突き合わせは月末にまとめてやることになり、そのときには何があったか思い出せません。
予約の記録に券の消費が紐づいていれば、施術が済んだ時点で残数が動きます。書く場所が1つで済み、突き合わせも要りません。券を扱うなら、予約の側と切り離さないでください。
券を勧める場面と、勧めない場面がある
回数券を全員に勧める必要はありません。勧めないほうがよい相手がいます。
初診の当日に勧めるのは、多くの場合早すぎます。まだ一度しか受けていない人に、先の回数分の前払いを求めることになります。断りにくい状況で買わせると、後から途中解約の話になりやすい。初診の日は、次の1回の予約を取ることに集中したほうが、結果として長く通ってもらえます。
症状の見通しが立っていない段階も、勧める場面ではありません。数回受けてみて変化を確かめる段階の人に、まとまった回数を先に決めさせるのは筋が通りません。
勧めるのが自然なのは、通う間隔が固まった頃です。すでに何度か来ていて、次にいつ来ればよいかがお互いに分かっている。この段階なら、回数券は支払いをまとめる道具として素直に働きます。
・初診の当日は勧めない ・症状の見通しが立つまでは勧めない ・通う間隔が固まってから勧める ・断られたら、そこで引く。次の来院時に蒸し返さない
会計の場で毎回勧める運用にすると、来院そのものが億劫になります。勧める回数の上限を、院の中で決めておいてください。
券を持っていることを、患者はよく忘れます
売った側は覚えていますが、買った側は忘れます。特に、間隔が空いた人ほど忘れます。
残りが2回ある状態で、3か月来ていない人がいたとします。この人は、券があることを忘れているか、期限が切れたと思い込んでいるかのどちらかです。どちらの場合も、こちらから一言伝えれば来院につながります。
伝える内容は、事実だけで足ります。券の残りが何回あるか、期限がいつまでか。ここに施術を勧める言葉を足すと、性質が変わります。残数と期限を伝えるだけの連絡なら、受け取る側も押し付けとは感じません。
この連絡を出すには、残数と最終来院日の両方で人を絞り込める必要があります。券の管理を紙で持っていると、この絞り込みができません。誰が何回残しているかを、一覧で出せる状態にしておいてください。
券を持つ人が枠を占める、という別の問題
回数券が売れると、当面の入金は増えます。その代わり、券を持つ患者が施術の枠を埋めていきます。
券で来る患者からは、その日の会計が発生しません。枠は埋まっているのに、その日の売上は立たない。この状態が続くと、日々の入金と、実際の施術の量が噛み合わなくなります。
・券を持つ患者が、1週間の枠の何割を占めているか ・その週に立った会計の金額と、施術した件数の比 ・券の販売が止まったときに、月の入金がどれだけ落ちるか
この3つを、券を売り始める前に一度計算しておいてください。券の売上に依存した状態になると、入金を保つために券を売り続けることになり、値引きの幅も広がっていきます。
券は資金を前倒しで受け取る仕組みであって、売上を増やす仕組みではありません。ここを取り違えると、忙しいのに手元の資金が減る、という状態に入ります。
価格の書き方を、最初に決めておく
券の価格を院内やホームページに出すときは、書き方を統一してください。
税を含む金額なのか、含まない金額なのか。1回あたりの金額を併記するのか、合計だけを出すのか。有効期限を金額と同じ場所に書くのか。これがばらばらだと、患者ごとに理解が違ってしまいます。
・合計の金額と、税の扱い ・1回あたりの金額 ・有効期限 ・使える施術の種類
この4つを1つの並びにして、券の案内でも会計の場でも同じ順番で伝えるようにすると、聞き間違いが減ります。院内の掲示とホームページの記載が食い違っていると、そこも問い合わせの種になります。価格を変えたときに、両方直す手順を決めておいてください。
回数券を出さない、という選択もある
ここまで書いてきましたが、回数券を出さない院も少なくありません。出さないことには、はっきりした利点があります。
管理の手間が発生しません。残数のずれも、期限の説明も、途中解約の対応も起きません。会計の場で勧める必要がないので、施術に集中できます。患者の側も、次に来るかどうかをその都度決められます。
継続して通ってもらうために回数券が要る、というのは思い込みであることがあります。次に来る日をその場で決める運用が機能していれば、前払いがなくても通院は続きます。むしろ、前払いがないほうが、来る理由を毎回確かめることになります。
券を出すかどうかを決めるときは、いま何が困っているのかから逆算してください。困っているのが継続なら、会計の場での次回予約の取り方を先に見直すほうが効きます。困っているのが資金の回転なら、券には意味があります。
数字で見る場所は3つ
券が院にとって得になっているかどうかは、3つの数字で判断できます。
1つ目は消化率です。売った回数のうち、実際に使われた回数の割合。低ければ、綴り数が長すぎるか、期限が短すぎます。
2つ目は失効した回数です。失効が多いと、その場では利益に見えますが、患者の不満として蓄積します。失効が続く院は、券の設計が患者の通い方に合っていません。
3つ目は再購入の割合です。使い切った人のうち、次の券を買った割合。ここが低ければ、券の値引きが継続につながっていないことになります。
3つとも、券の販売と消化の履歴が残っていれば計算できます。紙の券だけで運用していると、どれも計算できません。
券の記録は、施術録とは別の場所に置く
券の残数や販売の履歴を、施術録の隅に書き込んでいる院があります。紙で運用していた頃の名残です。
この形は避けてください。施術録は施術者が読むもので、券の記録は会計に属します。同じ紙にあると、券の残数を確認するために施術録を開くことになり、開く必要のない人が病歴の並んだ書面を見ることになります。
・券の記録……販売日、金額、綴り数、期限、使った日 ・施術録……主訴、取穴、経過、申し送り
分けたうえで、同じ患者として紐づいていれば、会計の場で残数だけを見られます。受付を家族や事務の人に任せている院では、この分け方が特に効きます。
券を台帳で扱うなら、ここを見る
券を台帳で扱うなら、鍼灸院の場合に見る点は絞られます。
まず、券を予約と紐づけて、施術が済んだ時点で残数が動くこと。別々に持つ作りだと、二重記録が残ります。次に、券ごとに使える施術の種類と有効期限を設定できること。美容鍼と治療で施術時間が違うので、ここが分けられないと長いほうばかり使われます。この2つの可否はできることに載っています。
券を含む運用の例は業種ごとの使い方に業態別で並んでいるので、近いものを1つ選んで写すと早く終わります。候補が複数あるなら、他社との比較で、残数を計算で出す形になっているか、数字を直接持つ形かを見比べてください。ここが違うと、運用の手間がまったく変わります。
実際の動きは触るのが早いので、デモを見るから6回綴りを1つ作り、1回消費してみてください。残数の見え方と、患者に伝わる形が確認できます。費用は、ずれの補填に使っている金額と並べて考えます。料金の月額と、年間のずれの金額を比べれば判断が付きます。券の期限や返金の扱いについてはよくある質問にまとまっています。
回数券は、患者を縛る道具ではありません。通う間隔を決めやすくするための取り決めです。決済が必須でない業態に合わせて、予約の受付から次の来店までを一続きにしている作りであれば、券の残りと次の予約が同じ台帳の上で見えるので、使い切った日に空白ができません。
Q1. 保険で通っている患者に回数券を使えますか?
使えません。健康保険を使った施術は1回ごとに施術の事実にもとづいて扱われるため、まとめて前払いを受けて回数を引く形とは仕組みが噛み合いません。回数券が使えるのは自費の施術だけです。同じ患者が保険と自費の両方を受けている場合は、回数を引くのは自費の分だけになります。
Q2. 回数券の有効期限は何か月にすればよいですか?
まず6か月を目安に検討してください。資金決済に関する法律には前払式支払手段についての章があり、発行の日から一定の期間内に限り使用できるものは適用しない旨の条文があります。その期間は施行令で6か月と定められています。自分の院がどの位置にあるかは金額の規模で変わるため、専門家や所管の窓口に確認してください。
Q3. 途中で通えなくなった患者に、返金は必要ですか?
返金の条件は売る前に文字で示しておいてください。解除に伴う損害賠償や違約金を定める条項は、平均的な損害の額を超える部分が無効とされる定めがあり、説明を求められたときは算定の根拠の概要を説明する努力義務も置かれています。どこまでの取り決めが有効かは事情で判断が分かれるため、規約は専門家に確認してください。
Q4. 回数券の残数がずれないようにするには、どう管理すればよいですか?
残数を数字で持って書き換える運用はずれます。売った履歴と使った履歴を別々に残して、残数は計算で出す形にしてください。書き換え忘れが起きず、ずれたときもどの記録が抜けているかを追えます。1回6,000円の施術で月に2件ずれると、年間で14万4千円ほどの負担になります。