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出張鍼灸の開業|届け出と訪問先の決め方

2026年10月7日・Rizaflow編集部

出張鍼灸の開業でまず調べるべきなのは、物件や道具ではなく届け出の名前です。施術所を構える場合と出張だけで働く場合では、出す紙も出す先も根拠の条文も変わります。ここを取り違えると、出したつもりで出していない状態から営業を始めることになります。この記事では、出張だけで開業するときの届け出を条文から確かめたうえで、税務署に出す2枚の期限、開業にかかるお金、訪問先の決め方、1日に回れる件数の見積もりまでを順番に並べます。結論を先に置くと、売上の上限を決めるのは腕ではなく、移動と予約の組み方です。

出張だけで開業するとき、届け出の名前が変わる

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律には、届け出の定めが並んでいます。施術所を構える場合と、出張だけの場合で条文が分かれています。

施術所を構える場合は、第9条の2が根拠になります。条文は「施術所を開設した者は、開設後十日以内に、開設の場所、業務に従事する施術者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない」と定めています。開設したあと10日以内という期限が法律に書かれていて、届け出る先は施術所の所在地の都道府県知事です。

出張だけで働く場合は、第9条の3が根拠になります。条文は「専ら出張のみによつてその業務に従事する施術者は、その業務を開始したときは、その旨を住所地の都道府県知事に届け出なければならない」と定めています。ここで2つ、施術所の場合と違う点があります。届け出る先が「住所地」の都道府県知事であることと、条文に「十日以内」のような期限が書かれていないことです。

期限が条文に無いからといって、後回しにしてよい話ではありません。実際の窓口では受付の期間を案内していることがあり、様式の名前も自治体によって変わります。「出張施術業務開始届」「業務開始届(出張専門)」といった名前で案内されています。住所地を管轄する保健所に、様式の名前と受付の期間を先に確かめるのが確実です。

もう1つ押さえておきたいのが、休止と廃止と再開のときも同じように届け出る定めがあることです。条文は「その業務を休止し、若しくは廃止したとき又は休止した業務を再開したときも、同様とする」としています。産休で1年止める、勤め先が決まって出張をやめる、そういう場面でも紙が1枚要ります。開業のときだけ覚えて、止めるときに忘れる人が多い場所です。

施術所を持たないと、構造設備の基準が外れる

出張だけで働く形を選ぶ最大の利点は、物件を借りなくて済むことです。ここは費用の話にとどまらず、法令上の基準が丸ごと外れるという意味を持ちます。

施術所を構える場合は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律施行規則の第25条に構造設備の基準が定められています。条文が挙げているのは4つです。6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること、3.3平方メートル以上の待合室を有すること、施術室は室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること、施術に用いる器具や手指の消毒設備を有すること。3つめについては、これに代わる適当な換気装置があるときはこの限りでないという但し書きが付いています。

さらに開設の届け出では、規則の第22条が求める事項を書きます。開設者の氏名と住所、開設の年月日、名称、開設の場所、業務の種類、業務に従事する施術者の氏名、そして構造設備の概要と平面図です。平面図を用意する作業は、物件が決まってから始まります。物件を探す、内見する、契約する、図面を引く、検査を受ける。この流れに2か月から3か月かかります。

出張だけの形では、この流れがありません。届け出に平面図が要らず、専用の施術室も待合室も要りません。保健所の検査を待つ期間もありません。開業までの日数が短くなるのは、この差です。

ただし、出張だけの形を選ぶと、自宅の一室で施術することはできません。自宅で人を迎えて施術するなら、それは施術所です。専用の施術室と待合室の基準を満たして、施術所として届け出る必要があります。「出張専門で届け出たうえで、ときどき自宅でも見る」という運用は、法令の建て方と合いません。どちらの形で働くかを、開業の前に決める話になります。

住所地の外へ出向くときの、もう1つの届け出

出張専門の届け出を出せば、どこへでも行けるわけではありません。法律には、もう1つ届け出の定めがあります。

第9条の4は、施術者の住所地が保健所を設置する市または特別区の区域内にある場合はその区域外に、それ以外の場合は住所地が属する都道府県の区域外に「滞在して業務を行おうとするとき」は、あらかじめ届け出なければならないと定めています。届け出る先は、滞在して業務を行おうとする地の都道府県知事です。

届け出る事項は、規則の第24条に並んでいます。施術者の氏名と住所、業務の種類、業務を行う場所とその期間です。期間を書かせるところが特徴で、恒常的に他県で働く話ではなく、一定の期間その地に滞在して施術する場面を想定した定めだと読めます。

ここで大事なのは「滞在して」という言葉です。日帰りで隣の県のお客さまのところへ行って帰ってくる形が、この届け出の対象になるかどうかは、条文の文言だけでは一律に決まりません。運用は自治体によって変わるので、県境の近くで開業する人は、両方の保健所に確かめてから動くのが確実です。県をまたいで施設と契約する話が出てきたときにも、同じ確認が要ります。

もう1つ知っておきたいのが、届け出を出す先が複数になりうることです。住所地の都道府県知事に業務開始届を出し、滞在して働く地の都道府県知事に別の届け出を出す。この2枚は別物です。片方を出したから両方済んだことにはなりません。訪問する範囲を広く取るつもりなら、範囲を決めた段階で確認の電話を入れます。

保健所の窓口で聞くときは、3つを揃えて聞くと話が早いです。住所地はどこか、訪問する範囲はどこまでか、施術所は持たないこと。この3つを伝えると、要る紙を教えてもらえます。

税務署に出す2枚と、その期限

保健所とは別に、税務署に出す紙があります。2枚で足ります。

1枚めは、個人事業の開業・廃業等届出書です。根拠は所得税法第229条で、新たに事業所得を生ずべき事業を開始した場合に届出書を提出する定めです。提出の期限について、国税庁の案内は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」としています。以前は開業から1か月以内という案内が広く知られていたので、古い記事を読んで慌てる人がいます。今の案内は確定申告期限までなので、開業の直後に走る必要はありません。ただし、早く出して困ることは何もありません。

2枚めは、所得税の青色申告承認申請書です。こちらは期限が厳しめです。国税庁の案内では、青色申告書で申告しようとする年の3月15日まで、その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は事業開始等の日から2か月以内とされています。開業届と違い、この2か月を逃すとその年は青色申告ができません。開業した年の帳簿を青色で付けるつもりなら、開業届と一緒に出してしまうのが安全です。

この2枚は、e-Taxで電子的に提出できます。書面で作って持参または送付する道も残っています。提出先は納税地を所轄する税務署長です。事務所の所在地が納税地と異なる場合でも、納税地を所轄する税務署以外への提出は不要だと国税庁の案内に書かれています。制度の詳細と様式は国税庁のサイトで確認できます。

保険と年金の扱いも、開業の時点で整理します。勤め先を辞めて開業する場合は、健康保険と年金の切り替えが要ります。手続きの窓口は住んでいる市区町村と日本年金機構です。どちらも期限があるので、退職日が決まった時点で確認します。個別の当てはめは所管の窓口に確かめるのが確実です。

開業にかかるお金を、3つの束で見積もる

出張だけの形なら、物件の費用がありません。かかるのは3つの束です。

1つめは、道具です。ベッド、施術に使う器具、消毒の用品、タオル類、施術着。持ち運ぶ前提なので、据え置き用の重いものは選べません。折りたたみの施術台は、軽さと安定のどちらを取るかで価格帯が分かれます。軽いものを選ぶと、体格の大きいお客さまで揺れます。実際に持ち上げてみてから決める買い物です。

2つめは、移動の手段です。車で回るのか、自転車と公共交通で回るのか。車なら、車両、燃料、駐車場、保険が毎月かかります。自転車と公共交通なら費用は下がりますが、持てる荷物の量が減り、雨の日の予定が崩れます。訪問先が集まっている地域なら自転車で足り、散っているなら車が要ります。開業の前に、想定する訪問先を地図に置いてみると判断が付きます。

3つめは、集客と受付の仕組みです。案内のページ、名刺、予約を受ける仕組み。ここを削る人が多いのですが、出張の形では受付の仕組みが売上に直接効きます。訪問中は電話に出られないからです。

収入の目安についても、実際の数字を挙げている解説があります。

独立開業して一人で運営する鍼灸院の場合、年収は350万〜450万円ほどといわれます。他の鍼灸師がいないので取れる予約の数に限度がありますが、知識や技術力、経験値を武器に、収益性の高い自費施術のサービスを提供することも可能です。 出典: squareup.com

ここで触れられている「取れる予約の数に限度がある」という部分が、出張の形ではさらに強く効きます。施術の時間に移動の時間が足されるからです。次の節でその計算をします。

1日に回れる件数と、移動時間の勘定

出張の売上は、施術の単価と件数の掛け算です。件数の上限は、移動の時間で決まります。

計算は単純です。1件の施術が60分、移動が片道30分、準備と片づけに10分。この場合、1件あたりに100分を使います。8時間働くと480分なので、4件がぎりぎりです。休憩と昼食を入れると3件になります。

この計算をすると、どこを削れば件数が増えるかが見えます。施術の時間を削るのは本末転倒です。準備と片づけの10分は、道具の積み方を変えれば5分になります。効くのは移動の30分です。ここを15分に縮めると、1件あたり85分になり、480分で5件入ります。1日1件増えると、月に20件以上変わります。

移動を縮める方法は2つです。1つは、訪問する範囲を絞ることです。半径を広げると1件ごとの移動が伸びます。開業の初期は範囲を広く取りたくなりますが、遠方の1件を受けるとその日の他の枠が使えなくなります。2つめは、同じ地域の予約を同じ日にまとめることです。月曜は北側、火曜は南側と決めておくと、移動が短くなります。

まとめるには、予約を受ける段で場所を見て振り分ける必要があります。電話で受けて手帳に書く形では、この振り分けができません。空いている枠を全部見せて選んでもらうと、地域が混ざります。地域ごとに開ける曜日を分けて、その曜日の枠だけを見せる形にすると、自動的にまとまります。

施設に定期で入る形は、この計算が一気に楽になります。1か所で3人から5人続けて施術できれば、移動が1回で済みます。個人宅を回る形と施設に入る形では、1日の組み立てがまったく違ってきます。どちらを軸にするかは、次の節で整理します。

訪問先を、個人宅と施設のどちらで組むか

訪問先には3つの道があります。個人宅、施設、仲介する会社経由です。

個人宅を回る形は、単価が高く取れます。自費の施術として値段を決められるので、1件あたりの売上が最も大きくなります。欠点は、集客を自分でやる必要があることと、移動が長くなることです。1人のお客さまのために片道30分をかけることになり、その人が来なくなれば売上がそのまま消えます。継続して通っていただける関係を作れるかが、この形の分かれ目です。

施設に入る形は、件数が安定します。高齢者の施設、事業所、寮。1回の訪問で複数人を見られるので、移動あたりの売上が高くなります。欠点は、単価が抑えられることと、契約が1本切れると売上が大きく減ることです。1つの施設に売上の半分を預けている状態は、危うい形です。

仲介する会社経由の形は、集客の手間が消えます。始めたばかりで紹介の伝手がない時期には現実的な道です。欠点は、手数料が引かれることと、お客さまとの関係が会社を通したものになることです。会社の側の方針が変わると、仕事が減ります。

現実的な組み立ては、施設を1か所から2か所と、個人宅を並行して持つ形です。施設で件数の土台を作り、個人宅で単価を取ります。仲介経由は、空いている枠を埋める用途に使います。どの比率で組むかは地域で変わるので、開業の前に近隣の施設の数を数えてみます。

施設と話すときは、3つを紙にしてから行きます。1回に何人まで見られるか、1人あたりの時間と料金、訪問する曜日と時間帯です。この3つが決まっていないと、先方も判断できません。口約束で始めて後からもめる場所は、料金の支払い方と、お客さまの都合で中止になったときの扱いです。ここは最初の紙に書いておきます。

料金の決め方と、交通費の扱い

出張の料金は、施術の料金と移動の費用を分けて考えます。分けずに1つの金額にすると、遠い訪問先で赤字になります。

施術の料金は、近隣の相場を見て決めます。ただし、店舗を構えている鍼灸院と同じ金額では合いません。出張には移動の時間があり、店舗には待合室の家賃があります。原価の構造が違うので、金額も違ってよいはずです。自分の1日の枠が3件だとして、必要な月の売上を3件で割ると、1件あたりの下限が出ます。この下限より安い金額を付けると、働くほど苦しくなります。

移動の費用は、3つの決め方があります。1つめは、一律の出張費です。距離を問わず同じ金額にする形で、計算が簡単です。近い訪問先には有利で、遠い訪問先では持ち出しになります。2つめは、距離で段を作る形です。3キロまで、5キロまで、10キロまでと区切って金額を変えます。公平ですが、お客さまに説明する手間が増えます。3つめは、範囲の外は受けないと決める形です。決めた範囲の中は出張費に含め、外は受けません。一番分かりやすく、予定も崩れません。

決めた内容は、予約を受ける前に見える場所に書きます。予約を受けてから「遠いので追加でかかります」と伝えるのは、もめる原因になります。範囲を地図で示している案内のページは、問い合わせの手間も減らします。

キャンセルの扱いも先に決めます。出張の形では、行ってから断られると移動の時間が丸ごと消えます。店舗なら次のお客さまで埋められますが、訪問先で断られた時間は埋められません。前日までの連絡なら無料、当日の連絡は施術料の一部、というように段を作って、予約の確認に書いておきます。取るか取らないかより、書いてあるかどうかが効きます。

支払いの方法も決めます。現金だけにするか、その場で電子的に受け取れる形にするか。高齢のお客さまが多い形では現金が中心になりますが、施設との契約では月ごとの請求になります。両方に対応できる形にしておくと、訪問先を選べます。

予約の受け方が、売上の上限を決める

出張の形で最も詰まるのが、予約の受け方です。訪問中は電話に出られないという一点が、すべてに効きます。

電話で受ける形の問題は、3つあります。1つめは、施術中に鳴った電話に出られないことです。目の前のお客さまを待たせて、まだ予約していない人の相手をすることになります。2つめは、移動中に出られても、手帳を開けないことです。運転中や電車の中で空き枠を確認できないので、折り返すことになります。3つめは、折り返した先が留守だと、その1件が消えることです。

数えてみると量が見えます。不在着信の一覧を1週間分だけ数えて、折り返して繋がった件数を並べます。折り返して繋がらなかった相手は、別のところに行ったと考えるのが自然です。1件の施術が6,000円で、週に2件こぼれているなら、月で48,000円が消えています。予約を受ける仕組みの月額と比べる相手は、この金額です。

予約を受ける仕組みを置くと、この3つが同時に解けます。空いている枠が外から見えて、その場で確定します。電話に出られない時間があることが、取りこぼしに繋がらなくなります。夜に思い立った人も、その場で押さえられます。

出張の形で特に効くのが、地域と曜日を結び付ける設定です。月曜は北側だけ、火曜は南側だけという形で枠を開けておくと、予約が入った段階で移動がまとまります。人が振り分けるのではなく、見せる枠の側で決めるのが要点です。決済が必須でない業態に合わせて、予約の受付から次の来店までを一続きにしている形を選ぶと、この枠の設計と来店後の連絡が同じ場所で組めます。どこまで自動にできるかは、できることで受付から次の訪問までの機能の並びを見て、いま手帳で回している工程と突き合わせると判断が付きます。

訪問先で起きやすい取り違えを、先に潰す

出張の形では、店舗では起きない取り違えが起きます。よく聞くものを4つ挙げます。

1つめは、住所の取り違えです。同じ町名に似た番地があり、着いてから違う建物だと気づきます。番地だけでなく、建物の名前、部屋の番号、目印になるものを予約の段で受け取る形にしておきます。マンションなら、玄関の入り方も要ります。集合住宅の入口で止まって10分使う場面は、聞いておけば避けられます。

2つめは、駐車する場所です。車で回る形では、これが毎回の課題になります。訪問先に停められるのか、近くの有料の場所を使うのか。停められない前提で組むと、探す時間が予定を崩します。予約の段で「駐車できる場所はありますか」の1行を入れておくだけで解けます。

3つめは、当日の連絡先です。施設への訪問で、担当者が休みだと入れないことがあります。施設の代表の番号だけでなく、その日に立ち会う人の連絡先を持っておきます。個人宅では、家族の連絡先を控えておくと、本人が出られないときに繋がります。

4つめは、施術する場所の条件です。床の広さ、ベッドを置ける場所、コンセントの位置、他の家族がいる時間帯。初回の訪問で確かめて、記録に残します。2回目から準備が速くなります。介護している家族と同居している家では、施術する部屋を移してもらう相談も要ります。

この4つを聞く欄を、予約を受ける段に1つずつ足します。訪問してから聞くと、その分だけ施術の時間が削れます。聞く場所を受付に移すだけで、現場の時間が戻ります。

事業としての名前と、案内の置き場所を決める

出張の形では店舗の看板がないので、見つけてもらう道を自分で作る必要があります。開業の前に決めておくものが3つあります。

1つめは、屋号です。個人の氏名で通す道もありますが、屋号があると案内が作りやすくなります。決めるときは、検索したときに他の事業と混ざらないかを確かめます。同じ名前の鍼灸院が近隣にあると、電話が間違って掛かってきます。屋号は開業届の欄にも書くので、出す前に決めておくと二度手間になりません。

2つめは、案内のページです。1枚でかまいませんが、載せる内容は5つ要ります。施術の内容と時間、料金と出張費、訪問できる範囲、予約の方法、施術者の資格です。資格については、はり師ときゆう師の免許を持っていることを書きます。あん摩マツサージ指圧師の免許も持っているなら、そちらも分けて書きます。まとめて書くと、どの施術ができるのかが伝わりません。

3つめは、予約の入口の置き場所です。案内のページ、地図アプリの事業者としての情報、名刺、施設に渡す案内の紙。同じ入口を全部に載せます。ばらばらの入口を載せると、どこから何件来たか分からなくなります。

広告の表現には制限があります。施術の効果について断定する書き方は、法令で制限されている範囲に触れることがあります。書ける範囲と書けない範囲の線引きは、所管の窓口や専門家に確認するのが確実です。制度の考え方は厚生労働省のサイトで公開されています。判断に迷う文言は、書く前に確かめます。

開業したあとに変えにくいのは、屋号と予約の入口のURLです。案内の文面は何度でも直せますが、この2つを変えると、配った名刺と地図アプリの情報が全部食い違います。この2つだけは、時間をかけて決めます。

訪問の予定を1つの表にまとめる

開業して3か月経つと、予定が分散します。個人宅の予約は手帳、施設の訪問は別の紙、仲介経由の依頼はメッセージアプリ。3か所に分かれた予定を朝に突き合わせる生活が始まります。

分散が生む事故は2つです。1つめは、二重に予約を受けてしまうことです。手帳に書いた個人宅の訪問を忘れて、同じ時間に施設の訪問を受ける。到着してから気づくので、取り返しが付きません。2つめは、移動が繋がらない組み方になることです。午前に北、午後に南、夕方に北と入ってしまい、移動だけで3時間使う日ができます。

1つの表にまとめると、どちらも消えます。同じ表に入っていれば、埋まっている時間に別の予約が入りません。地図の上で並べて見られる形なら、繋がらない組み方に気づきます。

まとめるときの順番は、件数の多いものから寄せます。個人宅の予約を仕組みに乗せて、施設の定期訪問を繰り返しの予定として入れて、最後に仲介経由の依頼を手で足します。全部を同時に移すと、移している間に予約が入って混ざります。1つずつ寄せて、寄せ終わった経路は元の場所を使わないと決めます。

道具を選ぶときは、月額の安さだけで決めないことです。無料で始められる仕組みには件数や機能の上限があり、上限に当たった時点で入れ替えが必要になります。入れ替えは予約とお客さまの履歴の移し替えを伴うので、最初から2年後の件数で選ぶほうが安く済みます。プランごとの上限は料金で件数とスタッフ数まで確かめ、必要な機能が全部入る最小の組み合わせは他社との比較で同じ条件のプランを並べて探します。訪問を前提にした業態の使い方は業種ごとの使い方に並んでいて、実際の入力の流れはデモを見るから確かめられます。つまずきどころはよくある質問に集まっています。

順番の話をして締めます。出張鍼灸を始める作業は、住所地の保健所に様式を確かめる、業務開始届を出す、税務署に2枚出す、訪問する範囲を決める、予約の受け方を作る、という5段で終わります。全部を同時に始める必要はありません。1段目の電話1本で、要る紙が全部分かります。

Q1. 出張だけで働く場合も、施術所の開設届は必要ですか?

必要ありません。根拠の条文が変わります。施術所を構える場合は開設後10日以内に所在地の都道府県知事へ届け出る定めですが、専ら出張のみで働く場合は業務を開始したときに住所地の都道府県知事へ届け出る定めです。様式の名前は自治体によって「出張施術業務開始届」等と異なるので、住所地を管轄する保健所に先に確かめます。

Q2. 出張専門で届け出たあと、自宅の一室で施術してもよいですか?

自宅で人を迎えて施術するなら、それは施術所にあたるので、施術所としての届け出が必要になります。専用の施術室6.6平方メートル以上、待合室3.3平方メートル以上、換気と消毒設備という構造設備の基準も満たす必要があります。出張専門と自宅での施術を併せるのではなく、どちらの形で働くかを開業の前に決めます。

Q3. 開業届はいつまでに出せばよいですか?

国税庁の案内では、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までとされています。開業から1か月以内という記載を載せた資料も出回っているので混乱しますが、今の案内は確定申告期限までです。一方で青色申告承認申請書は、1月16日以後の開業なら事業開始の日から2か月以内なので、こちらの期限で動くのが安全です。

Q4. 1日に何件くらい回れますか?

施術60分、片道の移動30分、準備と片づけ10分で計算すると1件あたり100分になり、8時間で4件がぎりぎり、休憩を入れると3件です。件数を増やす鍵は移動の時間で、訪問する範囲を絞り、同じ地域の予約を同じ曜日にまとめると1件増えます。施設に入る形なら1回の移動で複数人を見られるので、この計算が大きく変わります。

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